山下達郎さん サンデーソングブック 2019年4月21日『男性裏声シンガーで棚からひとつかみ Part.1』(#1384)
長崎市は、青空が広がりました。
外を歩くと汗ばむくらいの気温です。
長崎港では帆船祭りが開催されています。
今日のサンソン、ジェットストリームのタイトル曲は、ほんと懐かしいなぁ。
ということで、このブログでは山下達郎さんのサンデーソングブックのほんの一部をテキスト化しています。
誤字脱字は、ご容赦くださいませ。
◎ 冒頭
達郎氏:
えぇ、春めいてまいりまして・・だいぶ。
今は暖かいですけれども、夜はまたちょっと気温差が激しい・・・
沖縄の方は、最低気温で20度を超えるようですけれども。
北海道は、まだ2度という・・・
そういうところがございます。
日本は、狭いようで、広くて、南北に・・
土地、土地によって、いろいろありますけれども。
それでも春が近づいてくる今日この頃でございます。
私は、レコーディング、いよいよ今週が締め切りでありますので。
お尻に火がついておりまして(笑)
えぇ・・がんばっております!
で、番組の方はですね、先週も申し上げましたが、二月にいっぺんのですね聴取率週間でございます。
もう、でも、こんな二月にいっぺんしても、しょうがないんでですね・・・
で、今日はですね、変なプログラムにしました。
『男性裏声シンガーで棚からひとつかみ』
男の人で、ポピュラー・ミュージック界でですね、裏声で歌うひと、たくさんいますけども。
そういうようなものを選んで、今日は『男性裏声シンガーで棚からひとつかみ』
これが聴取率週間に有効なのかなんて(笑)
知りませんよ、そんな(笑)
でもプロデューサーの植田さんが、それでいいって言ったんだから、それでいいだろうと。
で、これを思いつきましてですね、先週。
選曲始めて、しまった!と。
星の数ほどあるんですよ!
リストアップするだけで、もう頭痛くなってきて・・
ですので、オールディーズの番組でありますので、あんまり新しいものはかけません。
60年代、70年代、80年代・・そういうような感じで選曲を致しました。
でも、ほんとに、あのぉ・・・(笑)
星の数ほどあるので(笑)
代表的なもの、ですから、まあ・・割とベタなプログラムになりますけれども。
その分、曲の良さ、歌のうまさは折り紙付きでございます。
1週間じゃ間に合わないので、2週間やることにしました。
2週間やって、どうすんだ(笑)っていう意見も、ございましょうがですね。
そういう要望がなければ、こういう企画思いつかなかったので。
ブツブツ文句言って(笑)
言い訳しておりますが(笑)
その間にレコーディング、一所懸命したいと思います。
そういうわけで、今週、来週2週間使いまして『男性裏声シンガーで棚からひとつかみ』
日曜日の午後のひととき、今日はですね、
男の人の裏声
迫力のある裏声
きれいな裏声
いろいろでございますがですね。
取り揃えて、お届けしたいと思います。
山下達郎サンデーソングブック、本日も最高の選曲と最高の音質で『裏声シンガー』お届けします。
で、私は、日本のそうしたポピュラー音楽の世界ではですね、ま、裏声を比較的多様してる・・・
今は、もうちょっとスタイルが違うんですけども。
70年代、80年代ではわりと珍しいパターン、歌を作ってきた人間でありますので。
まずは、私の曲からお聴きを頂ければと思います。
1983年、アルバム「メロディーズ」から
「悲しみのJODY」
♪ 悲しみのJODY(She Was Crying) /山下達郎
~ CM ~
♪ Hey There Lonely Girl/Eddie Holman
◎ 裏声とは・・・
達郎氏:
「裏声とは何か」と、いろいろありますけど。
まぁ・・
最近は
「ヘッド・ボイス」とか
「ミックスド・ボイス」とか、あとは
「ファルセット」とか
いろいろありますけど。
そういうことを説明する番組ではないので。
いわゆる「裏声」です!
我々が、ロックンロールの世界で「裏声」!ってそういう・・
ものをですね、今日はもう理屈なしで!いきます。
たくさん曲をかけよう、と。
そういう感じであります。
◎ Hey There Lonely Girl/Eddie Holman
達郎氏:
まずは、私の世代ではお馴染みのエディ・ホールマン。
ニューヨーク、フィラデルフィア、イーストコーストで活躍した60年代のあたまくらいからですね、10代の時からですねミュージカルなんかに出て、活躍しておりましたけれども。
今お聴きをいただきました1970年春の、全米2位のヒットソング。
「Hey There Lonely Girl」
もともとは、ルビー&ザ・ロマンティックスのヒット曲ですけども。
それのカバーでございますが。
これのヒットで一躍有名になりました。
エディ・ホールマン、私、大好きで。
自分でもカバーしてライブでもよくやっておりました(笑)
◎ レット・ヒム・ラン・ワイルド/ザ・ビーチ・ボーイズ
達郎氏:
我々の世代にとって、裏声のシンガーは、何と言いましてもビーチボーイズのブライアン・ウィルソンでございます。
すばらしい、この人も歌唱力でありますが。
1965年のアルバム「サマーデイズ」から至極の名曲「レット・ヒム・ラン・ワイルド」
♪ レット・ヒム・ラン・ワイルド/ザ・ビーチ・ボーイズ
◎ Let’s Put It All Together/The Stylistics
達郎氏:
ロックンロール、リズム&ブルースの世界ですから50年代あたりから裏声で歌う人が出て参りますが。
多くはですね、ボーカルグループのトップをやる人でございます。
その人がリードも兼ねる形で裏声で、歌うという。
ドゥー・ワップにそれが多く見られます。
その前は、ゴスペル・ミュージックとか、そういうのもありますけれども。
ですので、裏声中心に歌うスタイルのシンガーというのは、ボーカル・グループから出てくるひとが、大多数であります。
ですので、ボーカル・グループのリードシンガーとしての裏声シンガーという人もたくさんおります。
この人は、そうした中でも日本で最も有名な一人でございます。
ラッセル・トンプキンス・ジュニア
スタイリスティックスのリードボーカリスト。
1974年のヒットナンバー
♪ Let’s Put It All Together/The Stylistics
当時の邦題は「祈り」という・・
どうなっとんだ?
えぇ・・そういうアレですが。
◎ 比べると・・
達郎氏:
現在の裏声で歌う人と比べると、みんなタッチが強いですね。
この頃はまだですね、マイクの性能とか、そういうものが、そんなに発達していなかったので。
地声がちゃんと届く裏声なんですが。
最近の人は、もっとマイクに近づけてですね。
弱いニュアンスでも、オケにのるという・・
そういうような、まぁ録音技術が発達してきて、そういう具合になってきてます。
だから、歌ではありませんけれども、アール・クルーなんてですね、ガットギターの奏者でも、厚いオケに入っても負けないのは、そういうマイキングの技術とかですね、録音の技術が、そういう具合にさせて。
レコードの中の世界が、そこでまた今までとは違う、生演奏とは違う世界が作られると。
そういうような、ものですけども。
この60年代、70年代は、そういうところの以前の時代ですので。
やっぱりパワーが必要だと。
◎ ピーナッツ/フランキー・バリ
達郎氏:
そういう意味では、今までの
エディ・ホールマン、
ブライアン・ウィルソン、
ラッセル・トンプキンス・ジュニア
と同じようにですね、裏声で歌ってもパワーの塊でありましたのがフランキー・バリであります。
ザ・フォーシーズンズのデビューアルバム、1962年の『Sherry & 11 Others 』に収められております、もともとはLittle Joe & The Thrillers/リトル・ジョー&ザ・スリラーズの1957年のヒットソングで、ドゥーワップソングでございますが。
これのカバーでありますが。
ザ・フォーシーズンズのカバーは非常に優れたカバーでありまして。
のちに、たくさん、それのさらにカバーをする人たちが出て参ります。
♪ ピーナッツ/フランキー・バリ
◎ レット・ミー・ダウン・イージー/アイズレー・ブラザーズ
達郎氏:
今までの、お聴きを頂きました、いわゆるプッシュ!プッシュ!と言いますか、パンチのある裏声からですね、70年代くらいに入って参りますと、だんだんこう・・ソフトな歌い方・・・
それは録音技術が発達してきて、そうした今までにない音像を作れるという、そういうようなもので。
ソフトな歌い方。
俗にいうスウィート・ソウルとかですね、そういうものに発達します。
例えばボサノバなんかでも、そういう録音技術の発展なしには、語れない部分がありますが。
そんなような中でシンガーもスタイルを変えていく人がいまして。
そいう一人がですね、アイズレー・ブラザーズのリードボーカルでありますロナルド・アイズレーという・・
この人はシャウトするとすごいパワーがあるんですけども。
裏声で歌っても、同様に表現力が出せるという。
オールマイティーなシンガーであります(笑)
もう、なにかけてもいいんですけどもですね(笑)
有名なところで。
1976年のアルバム「Harvest for the World」に入っております至極の名曲「レット・ミー・ダウン・イージー」
♪ レット・ミー・ダウン・イージー/アイズレー・ブラザーズ
~ CM ~
◎来週
達郎氏:
来週も引き続き・・・
今週は、ほんとに裏声を使ったベタな選曲でお届けしておりますが。
来週はもうちょっと、少し幅広?
あんまり、変わんねぇか(笑)
で、レコーディングでテンパっておりますので。
ハガキのチェックが思うようにできません。
すいません!
落ち着いたら、またご紹介差し上げたいと思いますけれども。
◎ 裏声とは・・・
達郎氏:
裏声とは、そもそも何かとかですね、調べたんですけども。
なんか、最近はいろんなこと、アレがありまして。
専門家がですね、いろんなこと言っておりまして。
私なんか、裏声といったらもう・・・
裏声だ!って
ところが、なんかヘッドボイスとかミックスドボイスとかファルセットとか・・
なんか面倒くさくなって、やめました。
いいんです!
で、面白いもんですね(笑)
自分が裏声使うので、何が要するに、そこのヘッドボイスとかミックスドボイスとか、それがどうしたって(笑)
自分が歌えてアレなので(笑)
それが、だから、自分のスタイルがそうだからって、だからどうしたって!!
ま、そういう感じですね。
理論と実践の違い・・
そういう感じがいたしますが。
いいんです、聴いてよけりゃ!
◎ その一言で救われた
達郎氏:
昔、コーラス・スタジオミュージシャンやってたときにですね。
ボイシングでちょっと迷ってたことがあって。
その時にですね、有名なプロデューサーの人がいまして。
その人に
「これ、どうしたらいいんですか?」
「そんなのね、聴いて気持ちよけりゃいいんだよ!!」
その一言で救われたんですよ!
22の時ですけども。
それ以来、そういうものに、あんまりこだわらない(笑)
ようになりました(笑)
どうせ、ロックンロールですからね(笑)
アバウトなんですよ、ほんとに(笑)
◎ Mr.Lonely/Lettermen
達郎氏:
日本で有名なのは、レターメン!
男性のボーカルグループはですね、やはりこの下から上まできれいにレンジを広げようと思いますと、上の人はどうしても裏声になります。
そういうようなもののスタイルとしてバーバーショップとかですねオープン・ハーモニーとかいろんなのが、ありますけども。
レターメンもですね、地声とか裏声とか、いろんな曲があるんですけども。
裏声がきれいに・・そういう選曲じゃないとおもしろくないので(笑)
今日はですね、これ、日本のみのヒットです。
東京FMがまだFM東京といっていた時代にですね「ジェット・ストリーム」が始まりまして。
「ジェット・ストリーム」のテーマソングが「Mr.Lonely」という・・フランク・プゥルセル ですけれども。
FMが史上初、日本でオンエアされましたので。
これが非常に「ジェット・ストリーム」のテーマとして評判になりまして。
東芝は、それでレターメンの「Mr.Lonely」のバージョンを日本で発売しまして。
これが日本でたいへんヒットしましてですね。
日本以外ではチャートに入っておりませんけれども。
もともとは1965年のレターメンのアルバム「Portrait of my love」に収録されております。
もともとは、ボビー・ヴィントンのヒット曲ですけれども。
きれいな裏声が聴こえます。
♪ Mr.Lonely/Lettermen
我々の世代にはお馴染みでございますが。
レターメンのスタイルは、もともといわゆるグリークラブと言いましょうかですね。
バーバー・ショップといいましょうか・・
リードボーカルのメロディの上にハーモニーを付けるという。
バーバー・ショップは、だいたい4人なんですけども。
ベースがなくなったというのがレターメンのスタイルであります。
いわゆるカレッジで、たいへんに・・
一般的なスタイルであります。
今でもバーバー・ショップのコンテスト、全米で毎年行われておりますけれども。
この時代は、60年代は・・
特に白人のシンガーはですね、地声から裏声にあげて、裏声から地声に戻していくという・・・
そこの変化というか・・
ひっかかる感じを売り物にして、やっていた・・・
そういう特徴がこの時代にありました。
今の、例えば・・レターメンのMr.Lonelyにしましても・・
♪ Lonely,I’m Mr.Lonely
I have nobody~
この次の
♪ to call my own~oh~
And I’m so lonely~
この戻るところですね!
これが雰囲気を作るという感じで、あります(笑)。
◎ Ooo Baby Baby/The Miracles
達郎氏:
リズム&ブルースですと、またちょっと変わってきます。
ニュアンスが。
そんな中でリズム&ブルースの世界でウィスパーに近い裏声のニュアンスで、一番最初に画期的な実力を示したのが、スモーキー・ロビンソンでございます。
スモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズ
50年代から活躍しておりますけれども。
モータウンで大成功しまして。
ほんとにスモーキー・ロビンソンが一聴してわかる特徴のある歌い方、そしてすばらしい表現力を持った人でございます。
1965年のミラクルズの代表作「Ooo Baby Bab」
♪ Ooo Baby Baby/The Miracles
◎ 批判
達郎氏:
スモーキー・ロビンソン、カーティス・メンフィールドなんかにもいえますけれども。
もともとグループで歌ってた人が、ソロになりまして。
のちの評論家とかですね、そうした人がですね、そうした裏声のシンガーはグループで歌わないと真価を発揮できないと。
ソロでやると弱くなると。
そういう批判がずいぶんありました。
今でもありますね。
そうしたネットなんかみてますと、今のそうした柔らかい歌い方するシンガーに対しての批判みたいのが、すごく見受けられますけれども。
それは、さきほども申し上げた録音の変化でありましてですね。
そういうもので、今まで違った、なんか音像というのが作れるというですね・・
そういうものに合わせていく。
それが、要するにニーズがあるので、そういうことになるんで。
時代は変わりますのでですね。
いろいろ歌い方がかわっていくものをですね、「昔はよかった」という、単にそういうもので批判しないほうがいいかなって(笑)
思います、私なんかは。
◎ ロスト・ウィザウト・U/ロビン・シック
達郎氏:
60年代、70年代で私の聴いてきた時代の裏声のシンガーをお届けしましたけども。
そういう意味では、今のスタイルはちょっと、そのころとは違いますので。
そんなようなものを最後に、ひとつ聴いていただきたいと思いますが。
ロビン・シック
この人、上手いシンガーですね。
この人、お父さんもお母さんも芸能界なので。
サラブレッドですね。
作曲能力もありますし。
07年の・・
この曲いい曲で(笑)
よく聴いてましたが。
これなんかは、ほんとにあの・・
スタジオのレコーディングの、こう・・密室感というのが、非常によく出、そういう歌い方でございます。
♪ ロスト・ウィザウト・U/ロビン・シック
スモーキー・ロビンソンから40年の時間の開きがありますが、でも連綿と続いてる、共通点があるというですね・・
◎エンディング
達郎氏:
というわけで『男性裏声シンガーで棚からひとつかみ』
来週も引き続き、パート2をお届けします。
悪のりになってきましたのでですね(笑)
それだけ数が多いという(笑)
アレでございます。
バランスよく、ロックンロール、R&B、こう散りばめてお届けして。
来週も引き続き、そんな感じで。
で、今は裏声で歌う人、たくさんいますけどもですね。
私が始めたころは、あんまりいませんでした。
1曲目にお聴きいただきました「悲しみのジョディ」、ああやって歌う人もいませんでしたし。
当時はですね、そういうの誰もやってなかったので。
ま、差別化という意味で、そういう裏声で歌う曲をずいぶん作ってきました。
先日、キングトーンズの内田正人さんの追悼のプログラムをやった時にお聴きをいただきました「TOUCH ME LIGHTLY」
もともとは、キングトーンズに書いた曲ですけれども。
私の1979年の自分のアルバム「ムーン・グロウ」でカバーしております。
私版の「TOUCH ME LIGHTLY」で、今日は『男性裏声シンガーで棚からひとつかみ Part.1』
ご清聴ありがとうございました。
♪ TOUCH ME LIGHTLY(タッチ・ミー・ライトリー) /山下達郎
今週のオンエア曲
14:03 悲しみのJODY(She Was Crying) /山下達郎
14:08 Hey There Lonely Girl/Eddie Holman
14:13 レット・ヒム・ラン・ワイルド/ザ・ビーチ・ボーイズ
14:16 Let’s Put It All Together/The Stylistics
14:20 ピーナッツ/フランキー・バリ
14:24 レット・ミー・ダウン・イージー/アイズレー・ブラザーズ
14:33 Mr.Lonely/Lettermen
14:37 Ooo Baby Baby/The Miracles
14:41 ロスト・ウィザウト・U/ロビン・シック
14:46 TOUCH ME LIGHTLY(タッチ・ミー・ライトリー) /山下達郎
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