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山下達郎さん サンデーソングブック 2015年07月26日『SONGS 40周年記念特集 Part.1』

山下達郎さん サンデーソングブック 2015年07月26日『SONGS 40周年記念特集 Part.1』

日曜日の午後から風が強くなった長崎市内。
台風の影響で、いろんな行事が中止になったようです。

今週のサンソン、1970年代当時に16ビートミュージックを構築したバンド、シュガー・ベイブの経歴にも触れた話は興味深いものでした。
そういえば、シュガーベイブのマネージャーをされていた長崎市出身の長門芳郎さんが書き起こしたテキストをこのブログで紹介したことがありましたが、シュガー・ベイブが長崎市のNBCビデオホールで開催されたライブに出演していたことを思い出しました。

ということで、このブログでは山下達郎さんのサンデーソングブックのほんの一部をテキスト化しています。
誤字脱字は、ご容赦くださいませ。

◎ 冒頭

達郎氏:

私、先週ちょっとまた、仕事が建てこんできましてですね。
今日は、久しぶりの前倒しでございます。
ですので、お天気のお伺い、全然できないのが、寂しいですね。
録音の弱みでございますが。

もうすぐ、8月に入ります。
いよいよ8月5日に私の最初のグループでありますシュガー・ベイブ。
私、今年でデビュー40周年を迎えますが、その40周年の一番最初はシュガー・ベイブというグループに所属しまして、一枚だけのアルバム「SONGS」というアルバム、1975年の4月25日に発売を致しました。
それ以来、今年で40周年を迎えました。

そのアルバム「SONGS」
今まで、CD化されまして何度か、デジタル・リマスターで再発されて参りましたけれども、40年の時を経ましたので、ひとつ40周年記念バージョン 40th Anniversary Editionを 出そうじゃないかという事になりまして、来る8月5日にシュガー・ベイブSONGS -40th Anniversary Ultimate Edition、横行な名前を付けまして、リマスター、リイシュー、そしてなんと今回はリミックスバージョンも入れましてCD2枚組でリリースすることになりました。

当初は、それほどのプロモーションをする予定もなかったんですけれども。
なんか、いろいろWEBとか新聞の取材とか、雑誌の取材とかですね、そういうようなものも・・・

いわゆる、いつものオリジナル・アルバムほどではありませんけれども、それでも、随分今回は取材をやりました。

でも、まぁ自分の番組で、いろいろな事を御託をお聴きを頂くのが一番いいだろうという事なので、いつものようにですね、今週と来週の2週間使いまして、シュガー・ベイブSONGS 40th Anniversary Ultimate Edition の、色々とお話をさせて頂きたいと思いますが。

私自身が40周年を迎えますので、まあ、ほんのちょっとだけヒストリー・オブ山下達郎みたいなことも絡めましてですね、私がいかなる経過でシュガー・ベイブやってSONGSのアルバムに至るかというような事をお聴きをいただきつつ、今回の8月5日発売の40th Anniversary Ultimate Editionの内容について、色々と申し上げたいと思います。

とにかく40年も経っておりまして、シュガー・ベイブ、おかげ様で、まだ現行商品としてですね、流通しております。

私も大貫さんも、今だにおかげ様で現役でやらして頂いておりますので、いろいろなとこでインタビュー受けたりしておりますので。

正直言って、もう話し尽くしてるんですけれども(笑)
今回はリマスタ、リミックスということなので、また違う側面からですね、お話ができればなんてことを思っております。

とりあえず今週はSONGSに至るまでの経過、SONGSが発売されてからのSONGSの具体的な内容、そういうようなものの取っ掛かりで、来週はリマスターからリミックスへ、そしてボーナストラックへと今回の40th Anniversary Editionの具体的な細かいところまでですね。

ブックレットの中身、いろいろと資料的な問題・・・
シュガー・ベイブというのは最近では、いろいろなとこで資料がありましてですね、ま、Wikiなんかを見ますとですね、何処の誰かが書いたか判んないですね、どこまでほんとだか判んないヒストリーがズラーっと並べられていますけども。

そういうものを補正するべくやるだけの・・もうあんまり気力もございません(笑)

どこまでが嘘で、どこまでがほんとだかというのは、いちいちそんなもん目くじら立ててやってもしょうがないんで。

ま、そういう事とは別にですね、純粋に音楽的なお話をしつつ、2週間やってみたいと思います。
あんまり最近はシュガー・ベイブの話をしませんでしたのでですね。
たまには、よかろうと。

今週、来週SONGS 40th Anniversary Ultimate Editionの特集でございます。
さっそくCM挟んで、始めたいとお思います。

~ CM ~

◎全ては人の出会い

達郎氏:

山下達郎がお送り致しておりますサンデーソングブック。
そういうわけで、8月5日発売、シュガー・ベイブ「SONGS」40th Anniversary Ultimate Edition、今週、来週2週間続けまして、いろいろとお聴きを頂きたいと思います。

正直申しまして40周年記念盤でプロモーションする予定なかったんですけどね(笑)
いろいろと今回は、する事になってしまいました。

よもや、でも22歳の時に作った40周年記念盤をですね、62歳になって、40年経ってですね、レギュラー番組やるとは、思いもしませんでしたが。

全ては人の出会いと言いましょうかですね、そういうようなもので、ございます。

◎シュガーベイブの結成の経過

達郎氏:

さっそくシュガー・ベイブのSONGSに行きたいところなんですが。
私はこのシュガー・ベイブでデビューした人間ですので、私自身、山下達郎デビュー40周年迎えますのでですね。

このシュガーベイブの結成の経過をちょっと前半で、アルバムSONGS以前の音源をちょっとだけお聴きを頂きまして、後半からはSONGS、シュガーベイブの2015年リマスターから色々とお聴きを頂きたいと思います。

私は、もともと中学からアマチュアバンドを作りまして、中学・高校アマチュアバンドやっておりました。

大学に入る時に、それまでやっていた活動を記念してですね、自主制作を作りました。
『Add Some Music To Your Day』グループの名前はないんです。
アルバムのタイトルが『Add Some Music To Your Day』

ちょっとオタクな集団でございましたので、当時全く日本では人気がどん底でありましたビーチボーイズのカバー、アナログ盤。
A面がビーチボーイズのカバーでB面がドゥ・ワップとかですね、ロックンロール・ソングのカバー。

100枚、自主制作盤を作りました。
ここから全てが、音楽活動としての人生が始まります。

今、私、山下達郎のファンクラブで通販で販売しております。
『Add Some Music To Your Day』から「Don’t Worry Baby」

♪ Don’t Worry Baby(『Add Some Music To Your Day』より)/山下達郎

◎二つの道

達郎氏:

私、山下達郎、1972年ですから19歳の時でございますが。
友人と作りました自主制作『Add Some Music To Your Day』
ビーチボーイズのコピーで「Don’t Worry Baby」
ホームレコーディングでございます。

このアルバムが、全ての取っ掛かりでございます。
このアルバムをきっかけにして二つの道が出来ました。

そのひとつは当時、四谷にロック喫茶がありまして。
ディスク・チャートという名前のロック喫茶でございますが。

ここで、このアルバムを聴かせましたところ、仲良くなりました友達がいまして、その友人がシュガー・ベイブの初代のマネージャーになりますが。

ここで、毎週1回、お店がはねた深夜にですね、セッションをやっておりました。
そのセッションに遊びにこないかといって、行きましたら、アマチュアのミュージシャンがたくさん集っておりまして。

その中に大貫妙子さんがいました。

皆で大貫妙子さんをデビューするべくですね、彼女の作品をアレンジしたりですね、演奏したり、そういうことをセッションでやっておりました。

そのときの大貫さんの曲が「午後の休息」という、これは大貫さんのファースト・ソロアルバムに、「Grey Skies」というファースト・ソロアルバムに入っておりますが。

それが、すごくいい曲でですね。
また大貫さんの歌というのが、非常に個性がありましたので。
私も、そこの仲間に加わりましてですね、色んな事を手伝っておりますうちに、大貫さんにバンドをやろうかという、そういう話になりました。

残りのメンバーは、その自主制作盤を一緒にやったメンバー。
それから、そこで働いておりましたメンバー。
そういうようなものが、合わさりまして5人組のシュガー・ベイブというバンドが出来ました。

1973年のことでございます。

◎はっぴいえんど

達郎氏:

1973年の同じ時期に、この『Add Some Music To Your Day』というのをですね、高円寺のロック喫茶で、かかっておりました。

僕の友人のミュージシャンにアンプを借りまして、そのお礼に一枚あげたやつがですね、まわりまわってこの高円寺のロック喫茶でかかっていた時に、たまたま居合わせたのが伊藤銀次さんでありまして。

伊藤銀次さんは当時、『ココナツ・バンク』というバンドで福生に住んでおりまして。
大瀧さんのプロデュースを仰いで福生に大阪から移住したんですけども。

ここで大瀧さんに、この自主制作盤が渡ることになります。
1973年の夏の話でございますが。

折しも大瀧詠一さんは『はっぴいえんど』を解散して、73年の9月21日に『はっぴいえんど』の解散コンサートというのがありましてですね。
『はっぴいえんど』4人が、それぞれに別れまして、細野晴臣さんと鈴木茂さんは『キャラメル・ママ』、のちの『ティン・パン・アレー』でございますが『キャラメル・ママ』を結成しまして。

松本隆さんはドラマーから作詞家への道という、そういうものを模索している時代で。
大瀧詠一さんは、73年、ソロアルバムを出したあとにコマーシャル色々その他をやっていた時期でございますが。

大瀧さんは、この9.21と呼ばれる『はっぴいえんど』の解散ライブで、伊藤銀次さんの『ココナツ・バンク』をバックに、ソロ作品、CM作品、そういうものをやりましたが。

その時に私と大貫妙子さんと、ギターの村松邦男さんが3人でですね、参加しました。シュガー・ベイブというクレジットで参加しましてバックコーラスをやりました。

これが『はっぴいえんど』の解散ライブで今でも残っております。
『ライブ・はっぴいえんど』のCDに収録されております。
それを聴いて頂きましょう。

♪ ココナツ・ホリデー(LIVE)/大瀧詠一とココナツ・バンク

達郎氏:

◎ナイアガラ・レーベル

「ココナツ・ホリデー」、伊藤銀次さんと大瀧詠一さんの共作になりますが。
1973年9月21日、『はっぴいえんど』の解散ライブでの大瀧詠一 with ココナツ・バンク with シュガー・ベイブ

裏声で気張ってるのは私でございますね。
ここでシュガー・ベイブという名前が、そうした当時の日本のフォーク、ロックのメディアに認知された記念する日でありましたが。

この「ココナツ・ホリデー」、昨年の私のマニアックツアーでもライブやりましたし、20年前のSINGS SUGAR BABEのライブでもやっております。
また機会があれは、やりたいと思っております。

ここから大瀧詠一さんのプロジェクトに参加することになりまして。

大瀧さん、当時ナイアガラ・レーベルというのを立ち上げたばかりでございます。
その第一弾で、ほんとはココナツ・バンクがデビューする予定でしたけど、ココナツ・バンクが解散してしまいましたので、シュガー・ベイブに白羽の矢が立ちまして、ナイアガラ・レーベル第一弾としまして、シュガー・ベイブがデビューする準備が始まりました。

1974年のことでございますが。

1974年4月に、そのシュガー・ベイブの準備段階としてデモテープを録ろうということになりまして。
ニッポン放送JOLF、ニッポン放送のスタジオで4曲デモテープを録りました。
これをLFデモと読んでおりましてですね。

シュガー・ベイブSONGSのCDが94年、リマスターでリイシューされた時に、このデモテープ入れまして。
10年前の2005年に大瀧詠一さんが自らリマスターしたのにもこれが入っております。
ですが、まあ2回ボーナストラックで入れましたので、今回の2015年のUltimate Editionには入っておりませんけれども。

このLFデモは、わりとお馴染みですので、今日はそれを聴いて頂きましょう。

♪ パレード(demo)/SUGAR BABE

1974年4月に録音されました。
シュガー・ベイブのデモテープ、この中から「パレード」
4トラックで録音されたものであります。

エンジニアはもちろん大瀧詠一さんでございます。

◎ライブ活動

達郎氏:

そんな形でシュガー・ベイブというグループは、だんだん、だんだんレコーディングの準備が整ってきましたが。

ライブも74年から、ライブ活発に出来るようになってきました。
我々が生きていた時代というのは、こうしたロックバンドとか、そういうのがライブをやる場が、場自体があまりありませんで。

ひと時代前のですね、グループサウンズとか、そういう時代のライブ会場、ナイトクラブとかですね、そういうようなものの、ちょっと発展した形でございますが。
それでないとディスコ。
生演のディスコ。

そういうところは、全然目的が違いますのでですね。
そういう場がなかったんですが。

74年位から、だんだんそうした日本のフォークとロックがライブをやれる場というのが出来てきました。
そういうものの一つに、池袋のシアターグリーン。
もともとは芝居小屋なんですが。

これがレコード会社が出資しましてですね。
ホーボーズ・コンサート という当時の日本のロックバンド、フォークシンガー、そうしたものがライブが出来る、定期的なですねライブ会場という形で提供されるようになってきました。

私達も何回も出ておりますが。
そのときに録られた、2ミックスで状態は悪いんですけども、そういうレコーディングもございます。

これは1974年4月16日に池袋のシアターグリーンで録ったライブ。
これは2005年のシュガー・ベイブSONGSのアルバムのリマスター、リイシューCDにボーナストラックとして納められております。

♪ 想い(Live Version)/SUGAR BABE

こういう感じでデモを録って、ライブも少しづつ増えていく中で、いよいよデビュー・アルバムのレコーディングが1974年の9月からスタートするものでございますが。

40年前の話でございますが。
駆け足でシュガー・ベイブのSONGSのレコーディングまでの経過を辿ってまいりましたが。

~ CM ~

◎復刻アナログ盤

達郎氏:

特集やりたてで、プロモーションのエピソードあれするのは、なんなんですが。
このSONGS -40th Anniversary Ultimate Edition アナログも出します。

ワーナーミュージック・ジャパンからCDが出まして、ソニー・ミュージック・レコードからアナログが発売されます。
アナログ盤は、私がこの間やっておりますメロディーズ、ビッグ・ウェイブ等と同じように2枚組で、いい音でお聴きを頂けるために180グラム重量盤の2枚組みでリリースされます。

こちらの方はボーナストラックはございませんが。
今回、ワーナーミュージック・ジャパンから発売されますCDとですね、ソニー・ミュージック・レコードから発売されますアナログ、2タイトル両方ともご購入された方にはですね、応募抽選で400名様に非売品の「DOWN TOWN」の復刻アナログ・シングルをプレゼント致すそうでございます。

これは、私が別に考えたわけじゃないですよ。
レコード会社が考えたんですからね。
私、何も責任ないので(笑)

プロモート、プロモートってやつですね。
詳しくはCD,アナログの封入チラシにてご確認ください。

「DOWN TOWN」の復刻アナログ・シングル作るんですって!
凄いっすね。
え・・・(笑)

◎SONGSの特別番組 

達郎氏:

来る8月9日の夜7時からですね、東京FM,JFN系列38局ネットでSONGSの特別番組が放送されることになりました。

私のサンソンでもやっておりますけれども、そっちの特番の方はですね、私の視点だけではありませんで、私以外の色々な方からコメントを頂いて、それを交えてお送りする予定だそうです。

浜田省吾さん、サンボマスターの山口 隆さん、OKAMOTO’Sのハマ・オカモトさん、SONGSについて語って頂いるそうでございます。
私も楽しみでございますが。

そちらの出演は、私、山下達郎と鈴木万由香さんがお相手をして下さいます。
8月9日、日曜日夜7時から55分間。

一部、放送日時が異なる局がございまして、AIR-G’(FM北海道)は同じ時の夜8時。
ぐんま、広島、愛媛は夜9時
沖縄は夜10時

FM長崎は翌10日、月曜の夜7時からの放送だそうです。

詳しくはワーナーミュージック・ジャパンのサイト、こちらの方でご確認ください。

◎特異なアルバム 

達郎氏:

シュガー・ベイブのSONGSというアルバムは非常に特異なアルバムで、バンドのアルバムにしては、当時の他のアルバムと比べて、色々な点で変わっております。

一番変わっているのはですね、レコードの途中でメンバーが変えておりまして。
ドラムが複数になっている問題でありますとか・・・
バンドのアルバムなのに、ブラスとか弦が結構入っているとか、そういう割と作家的なアルバムになっております。

そういうところが非常に特異なんですが。

私と大貫妙子さんと二人で曲を書いておりまして、それに村松邦男さん、ギターの・・・彼の曲も入っておりますので、作風が非常に多岐に渡っているという特徴がございます。

いわゆるロック、ロックのアルバムではなくて、どちらかというとミドルオブ・ザロードのアルバムですので。
そういう意味では、他の当時の同世代のバンドなんかよりは、遥かに曲調が広範になっておりますので。

それが非常に変わっているという。

40年後ですので、今さらそんな事言ってもしょうがないんですが。
当時としては、そういう音出しているバンド、どこにも無かったので。
まあ、あるところでは、非常にカルトな評価も受けましたが、あるところでは、全く的はずれな評価(笑)といいましょうかですね、ロックがですね、まだ未開の地と言いましょうかですね・・・

ま、今ではあんまり関係ありません。

◎SHOW(2015 Remix)

達郎氏:

というわけで2015年リマスターになりました。
2005年のリマスターと1994年のリマスターと、どこが違うのかは皆さんのお耳でお確かめ頂きたいと思いますが。

ラジオを聴いても、その差は結構あります!

2015年的な音でリマスターして、それでも1975年のテイストは残すというですね。
非常にアンビリーバブルなトライでございます(笑)
まずは、リマスターバージョンのA面の一曲目。

♪ SHOW(2015 Remix)/SUGAR BABE

◎一番着目すべきところ 

達郎氏:

私も、大貫妙子さんも、ほとんど洋楽で育った人間であります。
ですので、洋楽的な音楽を作ろうという、そういう当時の日本の1970年の頭、歌謡曲と呼ばれる、昭和歌謡と呼ばれるそういうものから、だんだん洋楽的なものへ、シフトが移っていくという時代でありまして。

一番着目すべきところは何かと言うと、コードの、モダンなコード・・・
ジャズ、ボサノバ、そうしたコード進行のモダンさ。
そんなもん昔からやれば良かったじゃないかと思うんですけども。

日本の歌謡界の趨勢としましては、コードが難しくなるとメロディーが複雑になって、売れにくい。
歌えない、と。
普通の人が口ずさめない。

そういう難しいコードを使いたがる・・例えば
♪ ~Gui.(By 達郎さん)
こんなの今は普通ですけども、こういうコード作ると「それは売れないよ!」って、そういう時代だったんですね。ほんとに。

ですので、SHOWの一番最初の分数和音と呼ばれるですね・・
♪ ~Gui.(By 達郎さん)
これ、G/Aですけども。

こういうコード使うと、それはもう非常に嫌われたんですね。
忌み嫌われた!
歌謡界のそういう作曲技法としてはですね。

でも僕らは洋楽しか知らないので、そういうコードが綺麗だとおもったんですよね。

こういう分数和音っていうか、対応することによってモダンさが出るという、そういう事を大貫さんと二人で、いろいろ討議しあいつつですね、曲を自分たちで、自分は何を書くかとか、大貫さんは、どういう曲を書くか、僕はどういう曲を書くか・・

そういう事をやって始めたのがシュガー・ベイブというバンドでした。

◎DOWN TOWN

達郎氏:

同じような志を持つ人は、他にもたくさんいましてですね。
そういう人達と、いろいろとディスカッションをしながら・・・
スタッフもそうですし、ミュージシャンもそうなんですけども。

そういう具合に曲を作っていました。

で、ちょうどその時に大瀧詠一さんと東京の郊外の福生でですね、近所付き合いをしていた伊藤銀次さんがいまして、僕らがみんな、そうした洋楽ポップスの60年代の洋楽ポップスのファンだったものですから・・・

そういう話をするうちに、伊藤銀次さんと仲良くなりましてですね。
彼は、作詞に結構興味があった人なので、僕と二人で曲作ろうじゃないかと。
そういうとこから、色々、何曲か曲を作ることになったんですが。

そんな中で当時人気のあったキングトーズというボーカルグループがいました。
キングトーンズも非常にバタ臭いグループで、当時の歌謡曲とは全然一線を画してですね、キャンプまわりとか、そういうとこでプラターズのカバーをやりながら演奏活動をしてきた人達です。

たまたまグッド・ナイト・ベイビーという曲が大ヒットしまして、世間に名前が出ているんですけども。
当時のいわゆるムード歌謡とかそういう人達よりも全然モダンなので、彼らのために曲を書こうじゃないかと。

そういうような企画が持ち上がりまして、私と伊藤銀次さんで何曲か作って持っていったんですけども、企画自体がつぶれてしまいまして。

でもその中で作った曲で結構気に入った曲があったので、それをまぁ、シュガー・ベイブでやろうと。
で、レコーディングしまして。
それがDOWN TOWNでございまして。

それが自分たちのシングルとなって(笑)世に出てですね、それがシュガー・ベイブの代表曲となってしまうんですから、世の中は判りませんが。
当時の僕と伊藤銀次のですね、洋楽的な、そういう志向といいましょうか、そういうのが良く出た一曲であります。

♪ DOWN TOWN(2015 Remix)/SUGAR BABE

◎16ビートミュージックの構築

達郎氏:

この当時、1975年ですが、レコーディングしたのは74年ですが、私は昔からR&Bが好きで、そういうような曲をすごく作りたかったんですけども。

なかなか16ビートの曲は難しいのでですね。
生まれて初めて、そうした16ビート系の曲を作った代表が、このDOWN TOWNなんですが。

今、ここの40年間ずーっと言われてきたのはですね・・・
例えばこの曲はアイズリーからインスパイアされた曲なので、ま、例えば「If You Were There」のパクリであるとかですね・・・

何かちょっとイントロが似てると、これがパクリとかですね。
二十歳とか二十一の少年が、洋楽にアプローチしたのは、そういう曲書きたいと思ってやるわけですよね。

そういうのは今は、何のパクリとか、そうやってあげつらう事がほんとに得意技みたいにしてる人達がたくさんいますけど。

でも40年経ってですね、DOWN TOWNとそのトラックが当時の邦楽の他のレコードと比べてですね、こういうような音で完成させたものって、これしかないんです。

他のR&B風とか、そういうのありますけども、スタジオミュージシャンがやった音楽は別ですよ。
いわゆるバンドのサウンドとして、こうした16ビートミュージックの構築をしたのはシュガーベイブだけなんです。

それは大瀧さんの言葉の受け売りですけどね(笑)
大瀧さんはそう言ってくれました。

でもそれは大瀧さんのミキシングの、そうした勝利というのもあります。
これが、まぁ、今回のライナーでは力説しておりますけれども。
大瀧さんのエンジニアリングというものの、純粋さっていうのは、今回のライナーで、僕だいぶ書かせてもらいましたけれども。

これが、いわゆる当時のメジャーなレコード会社のハウスエンジニアとか専属ミキサーとかそういう人達はほとんどロックに興味もなかったし・・

歌謡曲の、まぁ専属アレンジャー、そういう人達も「ハイ、本番いって」とやって、僕達の音を録ると「あぁ こいつらヘタだな!」って、それで終わるんですね。

そすと、そうしたグルーブとかは全くなおざりにされて「ヘタなグループ、やっちゃってさ、今日」って、そうやって言われるという・・・そういうような時代でしたので。

それはほんとに大瀧さんがエンジニアリングをやってくれたということで、そういう事が非常に払拭されたというか、そういうような、ま、想い出と共にある「DOWN TOWN」であります。

◎蜃気楼の街

達郎氏:

いよいよ3曲めに大貫妙子さんが出てまいります。
「蜃気楼の街」というこれも当時から、すごく人気のある曲なんですが。

「蜃気楼の街」というのは、ほんとにシンプルな曲なので。
アレンジとかレコーディングする時、なんて言いましょうか、平坦にならないようにするという、それはレコーディングの前に結構ディスカッションしましてですね。

なので、それまで演奏してたやり方と変えようと。
で、新しくアレンジを取っ替えまして。
村松君はほとんど全部フェンダーのストラトキャスターで弾いてるんですが、この曲だけ、Gibsonのレスポールに持ち替えて。

僕もマーチンのアコースティックギターを誰かから借りてきましてですね。
アコースティックギターで演奏してるという、そういう、色々と、ま、言ってみればスタジオミュージック的な工夫がある曲が、この「蜃気楼の街」です。

♪蜃気楼の街(2015 Remix)/SUGAR BABE

これ、リマスタリングして不思議なことですけど・・・
今回リマスタリングして聴き直すと、あの時代のスタジオの風景がよみがえるんですよね。

やっぱりオーディオってのは、すごい恐ろしいもので、オリジナル・アルバム聴いても・・
これ聴くと、あの時のスタジオでレコーディングしてたギターの音っていうか・・

♪ ~Gui.(By 達郎さん)

こうやって、やってる自分がこう浮かんで来るっていうか・・
デジタルの進化って凄いなって(笑)思いますが。

◎風の世界

達郎氏:

4曲目に参ります。
「風の世界」の世界という、これも、どちらもライブで随分やった末でありますのでですね、アレンジが結構固まっていますけども。

大貫さんは、このへんの時代の曲は、なんて言うかな、今から聴くと、すごく不満が一杯だと、いつも仰っていますけども。
この、彼女の二十歳の時のですね、感性がよく出てるというですね。

ただ、まあライナーにも書いてありますが、そういう我々が演奏能力としてですね、十分再現できてないということが、ま、原因かなという(笑)
若気の至りといいましょうか・・
ま、そういうひとつの歴史として

♪ 風の世界(2015 Remix)/SUGAR BABE

◎ギター中心 

達郎氏:

シュガー・ベイブのSONGSというアルバムは基本的にギターバンドのサウンドです。
当時のライブも含めてなんですが、PAというのが、そんな発達してた時代じゃありませんのでですね。

ピアノ系の音があまり前に出すことが出来なかったので、結果的に演奏形態というのがギター中心になります。
従いましてSONGSというアルバムはギターがたいへん全面に出たサウンドです。

特にA面はそうなんですが。

従いまして、サウンドの中心は常にリードギターの村松君の役割となります。
村松くんが基本的にシュガー・ベイブのバンドサウンドの要に常になってます。
それに僕らの歌が乗っかっていくという形で出来上がっているのがSONGSというアルバムなんですが。

それは大瀧さんは非常に意識してミックスをしております。
ですから、どの曲でも村松君のギターが非常にこう、効果的に入ってくるという。

◎ためいきばかり 

達郎氏:

そうしたリードギター村松邦男の曲というのがA面の最後に入っております。
「ためいきばかり」という曲ですけれど。

村松邦男という人はですね、昭和20年代の日本の耽美主義文学と言われる・・いわゆる怪奇ものとか、そういうものに結構造詣が深い人でですね。
昭和20年代の耽美主義文学の代表的なのは香山滋という、ゴジラの原作つくってる人ですけども。

そういうようなのが、すごく好きなので(笑)
だいたい彼の作る曲というのは、そういうこう不思議なペシミズムとか、そういうのがあります。

そういうのが、もういかんなく、この一曲に発揮されてれると思います。
でもサウンドは、そういうリトル・フィートはじめとしてですね、ギター・オリエンテッドなサウンドになっているという・・
そのアンバランスが、またおもしろいという曲でございます。

♪ ためいきばかり(2015 Remix)/SUGAR BABE

◎エンディング 

達郎氏:

これで今日は終わりでございます。

今日お聴きを頂いた音源はですね、いつものようにCD手加えたものじゃないんです。
リマスターされたCDから直接オンエアしておりますので。
音の良さを感じて頂ければと思います。

今回は、ほんとに詳細なクレジットを各曲ごとにですね、ギターは左が誰で右が誰とか、そういうことは、ほんとにあれしてるんですけど。
村松くんのこの曲だけはですね、ギターが多すぎて。

一番コーダで右側でリード・ギター弾いているのは私なんですけど。
でも、村松くんのリードも残っておりますのでですね。
書ききれません。

そういうとこもありますが。
でも、なるべく詳細に全てのクレジットが記されております。
今回初めて、曲ごとのクレジットをのっけておりますので、興味がある方は、ほんとに喜んで頂けると思います。

この続きは、また来週。
来週はB面でございます。

そこから今度はリミックスバージョンのご説明、来週させて頂きます。
それでボーナストラックまでいければと考えております。

まずはSONGS 40th Anniversary Ultimate Edition 前説とA面で今週はお届けしました。
来週のB面&モア お楽しみに。

今週のオンエア曲

14:07 Don’t Worry Baby(『Add Some Music To Your Day』より)/山下達郎
14:12 ココナツ・ホリデー(LIVE)/大瀧詠一とココナツ・バンク
14:15 パレード(demo)/SUGAR BABE
14:17 想い(Live Version)/SUGAR BABE
14:26 SHOW(2015 Remix)/SUGAR BABE
14:31 DOWN TOWN(2015 Remix)/SUGAR BABE
14:36 蜃気楼の街(2015 Remix)/SUGAR BABE
14:39 風の世界(2015 Remix)/SUGAR BABE
14:43 ためいきばかり(2015 Remix)/SUGAR BABE

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