山下達郎さん サンデーソングブック 2019年4月7日『内田正人さん追悼キングトーンズ特集 Paart.2』(#1382)
長崎市内の桜は満開を迎えました。
春爛漫の陽気です。
今日のサンソン、キングトーンズの奥深さ、あらためて知ることができました。
ということで、このブログでは山下達郎さんのサンデーソングブックのほんの一部をテキスト化しています。
誤字脱字は、ご容赦くださいませ。
◎ 冒頭
達郎氏:
このサンデーソングブック、当初は「サタデーソングブック」として1992年の10月に放送をスタートいたしまして。
この4月でですね、放送26年半を迎えることになりました。
本年10月に27周年となります。
JFNネットワークの中でも、かなりの長寿番組でございます。
年度変わりでございましてですね・・・
転勤と、あとは入学、入社・・
そういうところで4月最初の日曜日・・
なんか引っ越ししたところ、掃除してる方・・
そういう方が初めて、お聴きになる方もいらっしゃるかと思いますけれども。
山下達郎サンデーソングブック
この番組はですね、いわゆるオールディーズの番組であります。
オールディーズ
古い曲
OLDIES BUT GOODIES
古くても、いい曲。
私自身ミュージシャンでございますので、私の新譜とか、関係各位の新譜に関しては、そういうものが、かかることがありますけれども、基本的には「OLDIES BUT GOODIES」
古いけれどもいい曲をかける番組であります。
この番組は、いわゆる台本がございません。
しゃべってる言葉は、その場で考えて、あれでございます。
曲の順番だけ、ありますけれども。
放送作家、構成作家という存在は、おりません。
私と、それからディレクターの山岸女史と、
それから技術の丸山君と
アシスタントの大塚君
今日から新参加になりました。
この4人だけでやっております。
完全家内制手工業の番組でございます。
27年間ですね、不都合もございましたけれども、長いことやれております(笑)
今年度も引き続き、お世話になります。
引き続き、リスナーの皆さまには、ご愛顧のほどを何卒よろしくお願い申し上げます。
東京はですね、寒い・・花冷えでございます。
それのおかげでお花見が長く続いております。
今日の収録の・・直前で録っておりますけれども、今日もですね、お堀を見ますと、まだ桜が咲いております。
私、あんまりお花見に興味がない人間でありますけれども。
お花見で、人だダ~ッといますと、それだけで引けてしまいまして。
でも、今、曲書いておりまして(笑)
お籠りでございますので(笑)
表へほとんど出ませんので。
ま、いいかなと。
でも今週あたりは、暖かくても夜は冷える。
あとは、雨が降る・・
ま、春の気候でございますが。
とにかく温度差が激しい今日この頃でございます。
ので、風邪、けっこう流行っております。
お気を付けください。
で、番組の方ですけれども、新年度またぎましたけれども。
先週から、キングトーンズのリードボーカルであります内田正人さんがお亡くなりになりましたので、
『内田正人さん追悼キングトーンズ特集』
先週からお届けしております。
今週は2週目でございます。パート2。
先週は、いろいろと御託を申し上げましたけれども。
今週は、あまりそういうことはなくてですね。
曲の方をお聴きを頂きたいともいます。
68年にデビューいたしまして、60年代を過ぎまして70年代の中期から、今日はスタートしてみたいと思います。
年度変わりでございますので、アタマに1曲。
この番組、一番最初に始まったときに、かけた曲でございまして。
この曲は先週申し上げましたみたいに、もともとはキングトーンズに提供するつもりで書いたんですけども。
企画がボツになってしまったのでシュガーベイブのレパートリーになりまして。
シングルカットもされています。
今やシュガーベイブの代表曲であります。
山下達郎のオリジナルでございます。
「DOWN TOWN」
♪ DOWN TOWN/Sugar Babe
~ CM ~
◎ 今週は・・
達郎氏:
先週は、1970年代中期まで、ポリドール時代をお聴きを頂きましたが。
今週はポリドールを離れまして、いろいろなレコード会社を移籍しまして。
その70年代中期以後のヒストリーを、曲をお聴きをいただきながら申し上げたいと思います。
先週は、いろいろと突っ込んだですね・・
えぇ・・
私の考えをお聴きを頂きましたけれども。
今週は、曲中心にお聴きを頂ければと思います。
と、申しますのも先週申し上げましたみたいに、ちょっと特集のタイミングが何十年が遅すぎたという・・ですね。
関係者の方々で物故された方が、たいへん多くいらしゃいますので。
そういう方々のお話しを伺えればですね、もっと、もっと突っ込んだ感じで、面白い話が伺えたと思うんですけど。
残念ながら・・・
◎ 一度だけのディスコ
達郎氏:
1976年に東芝に移籍をいたします。
そこでの第一弾のシングルが宇崎竜童さんの手による曲でございます。
1976年のザ・キングトーンズ
「一度だけのディスコ」
♪ 一度だけのディスコ/ザ・キングトーンズ
作詞 島 武実さん
作曲 宇崎竜童さん
編曲 萩田光雄さん
というコンビの作品でございますけれども。
これ、いまだに未CD化でございます。
先日ですね、宇崎竜童さんのところに伺って、この曲のエピソードをですね、いろいろと伺って参りました。
とっても面白い話が、たくさんありまして。
実は、宇崎さん、それより前にですね、キングトーンズに一回曲を書いたことがあるんですけども。
結局、使われないで終わってしまったそうなんです。
で、まぁ、キングトーンズに書いた曲なんで、裏声を使ったりですね、そうしたような作曲技法で描いたんですけども。
結局、使われなかったので。
それをですね、だヒットシングル「スモーキング・ブギ」のB面に収録したそうです。
「続 脱・どん底」のアルバムに入っておりますけれども。
「恋のかけら」という・・
これが、もともとはキングトーンズに提供した曲なんだそうです。
みなさん、いろいろなことやってるんですね(笑)
やっぱり(笑)
宇崎さんは作曲家でいらっしゃいますのでですね。
この「一度だけのディスコ」という作品は、当時のキングトーンズの所属事務所でありました小澤音楽事務所、ここの創設者であります小澤惇さんがですね、ひらかた ただしさんという東芝のディレクターの方に依頼しまして宇崎さんに曲を発注したんだそうです。
ちょうど打ち合わせの時に、近くにいたのが、作詞家の島 武実さんだったので、じゃ、これは阿木 燿子じゃなくて島 武実さんに頼もうと。
キングトーンズには、こっちが合ってるんじゃないかと、そういうようなことで、このラインナップでのレコーディングになったそうです。
プロデュースしておりますのが、渋谷森久さんという、この方、東芝の大プロデューサー、越路吹雪さん、加山雄三さん、クレイジーキャッツ・・
やめたあとも劇団四季からディズニーランドから本田美奈子さんまで昭和史を彩る大プロデューサーでございますが。
この方のディレクションでレコーディングが進められたそうです。
歌入れに立ち会ってもですね、内田さんは基本的にはディレクター、A&Rの指示通りに歌という。
やっぱり、60年代の日本の歌謡シーンを生きてきた方の、やっぱり製作態度だったというようなことを伺いました。
こうした1曲の中にもですね、いろんなヒストリーが入ってるという、たいへんにためになる宇崎さんとのアレでございまして。
何年ぶりにお目にかかりましたか・・ほんとに。
お元気で何よりでございます。
◎ Let’s Dance Baby
達郎氏:
この「一度だけのディスコ」のシングルの発売の後にですね、アルバムが発売されることになりますが。
このアルバムに私が曲を書き下ろすことになります。
1978年のことですけども。
この当時、私、CMずいぶん作っておりましてですね。
そのCMが、やはり、あの・・小澤音楽事務所のですね子会社の方に、ずいぶんCMの発注をいただきましてですね。
そんな関係で、あるとき音楽出版社にちょっと行きましたら、その小澤音楽事務所の出版社のスタッフの方が
”あぁ~、山下君、探してたんだ!”
”今度、キングトーンズのアルバム作るんで、曲書いてほしいんだ”
それで、詩がもうできてるっていうんですね。
コンセプトアルバムでありまして。
詩を渡されまして。
3曲渡されまして。
そのうちの2曲が日本語詩で。
吉岡治さん!
もう演歌の大御所でございますが、大阪しぐれ・・
そいでもう一曲が、当時YMO関係にたくさん詩を提供しておりましたクリス・モズデルさんの詩がありまして。
3曲いただきましてですね。
そのころ、だけど私、わりと曲書きのスランプの時期でありまして(笑)
なかなか、できずに、ウンウンうなって、やっと3曲書いて、お渡ししまして。
アルバムのアレンジは梅垣達志さんが、なさっておりますので、私はレコーディングには一切かかわってないんですけども。
で、78年、作ってたアルバムで曲が出来なかったので。
じゃ、せっかく書いた曲を使おうと。
思いましたら、ディレクターがですね、これはいい曲だから、これシングル切ろうと、私、生まれて初めてシングルカットしたのが、お馴染みの「Let’s Dance Baby」でございます。
これは、もともとキングトーンズのこのアルバムのために提供した曲であります。
♪ Let’s Dance Baby/ザ・キングトーンズ
◎ Touch Me Lightly
達郎氏:
キングトーンズ、78年のアルバム「レザレクト」
こっから「Let’s Dance Baby」でございました。
このアルバムには3曲入っておりますけれども。
もう1曲、これはクリス・モズデルの英語に曲をつけたものなんですけれども。
やっぱり、内田さんが歌う以上ですね、当時、いわゆるスゥイート・ソウル路線で1曲書いてみようと思いましてですね。
これずごく自分で気に入ったので(笑)
その次の1979年のアルバム「ムーン・グロウ」にセルフ・カバーしてしまいました。
これも山下達郎のリスナーにはお馴染みでございます。
♪ Touch Me Lightly/ザ・キングトーンズ
思った通りの出来上がりになって(笑)
すごいなぁ~って思いました(笑)
お葉書がきて。
この「レザレクト」のベースがすごく、いいんだけど誰かと。
高橋ゲタ夫さんです!
上手いっすねぇ。
ドラムは林立夫さんだと思いますけど。
ギターは、松原君かなぁ・・
松木さんのクレジットもありますけど。
松木さんは、もうちょっと手数少ないので。
えぇ・・松原さんかなって感じがしますが。
いずれにしましても、すばらしいプレイと、すばらしい歌であります!
◎ Doo-wop! Tonight
達郎氏:
でも、東芝時代はヒット曲が出ませんでですね・・・
アルバムも・・
今聴くとね(笑)いいんですけど、これ、進みすぎてるんですよ(笑)
ほんとに!!
で、80年にですねSMSレコードに移籍をしまして。
シングルを出します。
これが大瀧詠一さんのプロデュースで。
その筋では、非常に話題になりましたけれども。
これもまた、進みすぎた1曲でございます。
ベルネッツの「Tonight」を脚色して「Doo-wop! Tonight」というタイトルを付けました。
これでシングルカット、1980年にされました。
しかも、ダイレクト・カッティング!
一発録り!
というモノラル盤という。
もう大瀧さんらしい、素晴らしい出来です。
♪ Doo-wop! Tonight /ザ・キングトーンズ
◎ In The Stii of The Night
達郎氏:
キングトーンズ1980年、SMSレコード移籍第一弾シングル、大瀧詠一さんのプロデュース。
訳詞も大瀧さんですね、1961年のベルベッツの「Tonight」の邦案でございます「Doo-wop! Tonight」
B面が、ずばりファイヴ・サテンズの「 In The Stii of The Night」をもってきております。
どちらの曲も1981年のアルバム『Doo-Wop STATION』に収録されておりますが。
こちらの方はDJでつないでいくノンストップ・タイトルですのでシングル・バージョンでないと、味がわかりません。
シングルB面でございます。
♪ In The Stii of The Night /ザ・キングトーンズ
日本語版でございますが。
訳詞しておりますのは、担当A&Rの井岸さん。
キャロルとか、あれですね・・
フィンガーファイブのA&Rで有名な人ですね。
この方のペンネームで書いた日本語詩だそうです(笑)
資料に載っておりました。
~ CM ~
◎ご勘弁いただきたい
達郎氏:
最近、私、年のせいかですね・・
言い間違いが多いんですよね。
しょっちゅう、山岸君に怒られるんですけど。
なんか年号が特に・・・
自分で言ってるつもりがですね、あとで聴くと違う、というですね・・
先週も、いろいろありまして。
みやがわひろしさんのことを”やすし”さんと言ってみたり、ですね・・
69年なのを、69年と言ってるつもりが、65年と言ったりですね。
この世界になりますと、山岸くんもチェックがしきれない。
いつも、そうやって言い間違いを厳しく叱責さますがですね。
年を食ってきたと、いうことですね・・・
え・・・
ご勘弁いただきたいと・・思います。
◎ラストダンスはヘイ・ジュード
達郎氏:
SMSで何枚かアルバムを出すんですけれども。
現在のキングトーンズ評価のですね根幹は、この80年代以後のSMS時代の一連の活動でございます。
それに深く関わっていらっしゃるのが大瀧詠一さんでございます。
さきほどお聴きをいただきました「 Doo-wop! Tonight」
この後からですね、SMSは一年の間に、たくさんシングルを出すことになります。
メンバの加生スミオさんの作品、そのあとは井上大輔さんの作品。
いい曲があるんですけど、今日は時間がなくて(笑)
かけたかったんですけど、時間の都合でかけられません。
すいません。
ですけれども、この後にですね、1981年に再び大瀧詠一さんと組むことになりまして。
これが、その当時のですね、若いリスナーに非常にアピールをしまして。
ビートルスの大ヒット曲でございます「ヘイ・ジュード」
作者のポール・マッカートニーはですね、この曲は「ラストダンスは私に」、ドリフターズのヒットソングですが、これにインスパイアされて作ったと。
コード進行が似ているという。
そういうようなエピソードからですね、この2曲を同じコード進行上でつなげて演奏するという前代未聞のシングルが出ます(笑)
1981年、大瀧詠一さんのプロデュースでございます。
♪ ラストダンスはヘイ・ジュード/ザ・キングトーンズ
今聴くとですね、これ、チャートに入ってるのかなと思いますけれどもですね・・
入ってないんですよね、これがね。
そういうものなんです。
そういう時代でございます(笑)
◎スイング・ロウ,スイート・チャリオット
達郎氏:
でも、このSMS時代に、アルバムを3枚リリースしております。
独立記念日に、横須賀の米軍キャンプでライブ演奏しました。
ライブ・アルバム。
それから大瀧詠一さんの作品を収録しまして、それをDJ形式でノンストップでまとめました『Doo-Wop STATION』というアルバム。
そして1982年にはですね、カセットだけの企画、当時はカセットも大きなシェア占めておりましたので。
カセットで出しました「渚の“R&B”」というですね。
これはカバーで網羅されました1枚でございますけれども。
オリジナル・メンバーの成田 邦彦さんのインタビューを拝見しますと、このアルバムは自分が一番好きかもしれないという。
自分達が好きなようにやれた1枚だと。
最初に申し上げましたみたいに、いわゆる歌謡曲フィールドですと、やっぱりシンガーはディレクションの通りにやらなければならないという・・・
作曲家、作詞家、そしてディレクター
そうした人の意向が入りますけれども、この「渚の“R&B”」というカセットはですね、自分達が好きなようにできたと、そういうようなインタビューが残っております。
事実、たいへんに出来のいい作品でございまして。
特に60年代のキャンプで歌ってたと思われる曲はですね、たいへんのびのびと歌っております。
そんな中の1曲。
アメリカのトラッド・ソングでございます。
♪ スイング・ロウ,スイート・チャリオット/ザ・キングトーンズ
完全なバーバーショップ・スタイルで歌われております。
ドゥ・ワップはこういうシンギング・スタイルはとりません(笑)
米軍キャンプでやっていたスタイルだと思います。
◎エンディング
達郎氏:
というわけで2週間、お届けしてまいりましたキングトーンズ特集、内田正人さん追悼特集でございますが、まだまだかけたい曲、たくさんあるんですけど。
2週間でも足りないという・・・
そういう感じでございます。
先週も申し上げましたが、いわゆる60年代の保守本流歌謡曲から見ますとですね、異端ともいうべきですね・・・
でも美しき異端でありますね。
それが日本のフォーク、ロックのブームになったときと同じようなインディ、保守本流から外れたですねメカニズムがだんだん運動論として発展するにつれられて、そうしたキングトーンズの、そうした美しき異端性というのがですね、シンパシーを、それまで得なかったキングトーンズへのシンパシーというのが生まれてきたと。
もともと、そういうものを持っていたということが言えます。
アメリカ文化というのは、ほんとに、昔とほんとに比べ物にならないほど遠かったアメリカでありまして。
そういう憧憬がですね、音楽を志すものにとって、重要な要素だった故に、また圧倒的な情報不足からくる多くの誤解もありました。
今でもあります。
そんな時代に、ロックンロールへの文化的認識が、なまじ正確だったために、いろいろと苦悶された、努力された先輩方、それがキングトーンズという存在でありました。
心から敬意を表しますとともに、内田正人さんに心からご冥福をお祈り申し上げたいと思います。
今日の最後はですね、そんな我々と同じようにですね、キングトーンズに、そうしシンパシーを抱いた方の中の一人で。
高野寛さん。
高野寛はキングトーンズにインスパイアされて作った曲が「夢の中で会えるでしょう」というですね・・
1994年の彼のシングルですけれども。
それを1995年のキングトーンズのアルバム「ソウル・メイツ」でキングトーンズ自身がカバーをしております。
それを最後にお聴きをいただきながら、内田正人さん追悼・キングトーンズ特集、ご清聴ありがとうございました。
♪ 夢の中で会えるでしょう/ザ・キングトーンズ
今週のオンエア曲
14:04 DOWN TOWN/Sugar Babe
14:10 一度だけのディスコ/ザ・キングトーンズ
14:18 Let’s Dance Baby/ザ・キングトーンズ
14:22 Touch Me Lightly/ザ・キングトーンズ
14:28 Doo-wop! Tonight /ザ・キングトーンズ
14:31 In The Stii of The Night/ザ・キングトーンズ
14:37 ラストダンスはヘイ・ジュード/ザ・キングトーンズ
14:42 スイング・ロウ,スイート・チャリオット/ザ・キングトーンズ
14:46 夢の中で会えるでしょう/ザ・キングトーンズ
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