山下達郎さん サンデーソングブック 2012年11月11日『佐藤博さん追悼特集 Part2』
今日のサンソンは「佐藤博さん追悼特集 Part2」
ボーカリストとしての佐藤さんも素敵です。
ということで、このブログでは山下達郎さんのサンデーソングブックのほんの一部をテキスト化しています。
誤字脱字は、ご容赦くださいませ。
◎ 冒頭
達郎氏:
今日は11月11日。
1が4つ並ぶというですね。
めでたい日曜日でございます。
すっかり秋めいてきました。
日差しも秋晴れ。
東京はですね、ちょっと雨も降ったりしますが、概ねいい天気でございます。
ぐっと朝晩は冷え込んで参りまして、気温の寒暖の差が激しい今日この頃でございます。
私、竹内まりやさんの新曲のプリプロが今週から始まります。
デモテープ上がってきましてですね、レコーディングに入るわけでございますが。
その間に、いろいろと片付けその他やっておりますが、いっこうにですね、なかなか部屋が綺麗になるまでは、まだちょっと遠いかな、という感じでございます。
ちょっと片付いたと思いましたら、頼んでおいたDVDが来て、それを広げると、またこれが山になってしまう。
それの繰り返しでございます。
ま、私に限らず、私の同年代の方々、レコードオタクの方は似たようなことを味わってらっしゃると思いますが。
そんなわけで、いよいよスタジオに入って行く11月でございます。
番組の方は、先週、佐藤博さんの追悼特集をPart1でお届けしました。
今週もPart2で、2週間続けてお聴きを頂きます。
先週から続けてお聴きを頂いている皆様、多いと思いますので、あまり沢山は申し上げませんが。
先週は佐藤博さん、私とそれから竹内まりやさんの作品でキーボード・プレイして頂きているものを中心にお届けしましたが、今日は佐藤君のソロ作品を主にいってみようと思いましたが、なにしろ作品が多すぎましてですね。
とてもすべてをご紹介することができませんので、私の好きなやつ。
で、ほんのちょっとでありますが、いろいろな人にキーボード弾いてるところ。
最後はまた自分の作品で弾いてもらってる佐藤君のプレイをお聴き頂く・・・。
今日は、ごった煮でございます。
佐藤博さん追悼特集 Part2でございます。
4週間くらい、すぐできちゃうくらいの作品が残っておりますが。
そういう訳にも参りませんので、今日は佐藤博さんの追悼特集Part2で、前半は特に佐藤君のソロ作品の中から、いろいろと私の好きなやつを選んでお聴きを頂きたいと思います。
まずはですね、ほんとに1977年から20年以上、佐藤君のキーボード、僕の作品で弾いて頂きましたが、珍しく僕が佐藤君のアルバムでギターを弾いてるという作品がございます。
1982年の彼の「AWAKENING」というソロアルバム。
彼は非常にキーボード・プレイヤーなんですけど、マルチ・・・
ソロ作品は一人多重、もしくは一人マルチプレイでアルバムを作るというようなのが非常に多くて。
しかもですね、デジタルドラムが出ますと、それに飛びついて。
センセの新しいのが出ますと、飛びついて。
コンピュータがあれすると、もう・・・
新しいもの好きなんですね、とにかく!
いつも最先端の新しいものに非常に興味を示す、好奇心の塊のような人であります。
1982年のアルバム「AWAKENING」を出した時にはリン・ドラムっていうですね、ドラムマシーンが出まして。
これに飛びつきましてですね。
全編リン・ドラムで仕上げた作品でございますが。
ここに僕、2曲ほど呼ばれてギターを弾いて参りました。
佐藤博さん、1982年のソロとしては4作目のアルバムになります「AWAKENING」からSAY GOODBYE
♪ SAY GOODBYE /佐藤博
~ CM ~
♪ Pom Pom 蒸気 /細野晴臣
◎ Pom Pom 蒸気
達郎氏:
先週に引き続きまして、まだ半月しか経っておりませんが急逝されましたキーボード・プレイヤー佐藤博さんの追悼特集Part2を今日はお届けします。
先週は私山下達郎、それから竹内まりやさん、私関係の作品で弾いてもらってる佐藤君の作品をご紹介しましたが、今週はその他。
彼のソロ作品、その他のもの・・・から、沢山ありすぎるので、私の好きなやつ。
佐藤君はブルース・ベイシックで特にブギ、ラグタイム、そうしたものに物凄く長けたピアノプレイヤーですが。
特ニューオリンズものは白眉でございます。
そうしたものの代表作のひとつ、細野晴臣さんの1976年のアルバム「泰安洋行」
この中に入っております 「Pom Pom 蒸気」という。
間奏のソロも素晴らしい!
こういうのやらせたら無敵でありますですね。
こっから今日はスタート致しました。
◎ 福生ストラット
達郎氏:
この時代、細野さんと大瀧詠一さん、この時代でニューオリンズものをですね競っていた時代があります。
大瀧詠一さんはその一年前、1975年のアルバム「ナイアガラ・ムーン」
この中にそういうのが沢山入っておりますが。
先ほどの細野さんのはフランキー・フォード風系ですけど、こちらはもろミーターズ・・
ニューオリンズのファンクグループ風でございます。
お馴染「福生ストラット」
♪ 福生ストラット /大滝詠一
大滝詠一さん、1975年の「ナイアガラ・ムーン」から「福生ストラット」
後にウルフルズのカバーでも有名でございますが。
面白いことにですね、先ほどの細野さんの「Pom Pom 蒸気」と、この大滝さんの「福生ストラット」、どちらもリズムセクション、同じです。
林立夫さん、細野晴臣さん、鈴木茂さん、そして佐藤博さんという、この4リズムでレコーディングされております。
歌い手だけが違うという(笑)
時代であります。
◎ バッド・ジャンキー・ブルース /佐藤博
達郎氏:
さて、佐藤博さんは、こうして人のセッションでたくさんピアノプレイをしておりますが、彼自身のソロ作品というのも沢山残っております。
ミニ・アルバム、レギュラー・アルバム含めまして17枚残されております。
その中から時間の許す限り、前半お聴きを頂きたいとお思いますが。
もともと1972年頃からですね、佐藤君は、いわゆるピアノ・プレイヤーとしましてですね上田正樹さんなんかと活動を始めた・・・ちょどその頃に作られた曲だと、僕は聞いたことがあります。
佐藤博さんといいますと、この「バッド・ジャンキー・ブルース」っていうのがですね初期の代表作の一作であります。
髪は短かく ネクタイ締めた
やつらの言うことは あてにできない
いつのまにか 騙されてしまう
20代の反抗精神一杯の曲でございます。
1977年の佐藤博さんのセカンドアルバムになります「TIME」に収められおります。
♪ バッド・ジャンキー・ブルース /佐藤博
これは大阪勢の、関西勢のリズムセクションによる、ドラムは井上茂さん、 田中章弘のベースで、塩次伸二さん・・・彼も亡くなってしまいましたがエレクトリック・ギター、妹尾隆一郎さんのマウス・ハープで、斉藤ノブさんのコンガ。
駒沢裕城さん、東京勢の一人、スティール・ギターで参加しております。
◎ クロール /佐藤博
達郎氏:
佐藤博さんはピアノ弾きなんですが、歌がとにかく好きでですね。
もともと作曲家を志して、それをするにはギターよりもピアノの方が作曲に有利だという、そういう解釈でピアノを始めたという、本人からそういう事を聞いたことがあります。
ソロアルバムでもですね、歌を一生懸命歌おうという、そういうアプローチも物凄くあります。
インストよりも圧倒的に歌ものの方が思い入れが強いという・・・
そういう面がいつもあります。
ですので70年代、80年代、90年代、そして2000年代入りましても、たくさん歌もののレコーディングが残っているんですが、とてもすべてご紹介できませんので、僕の好きなヤツを一つ。
1995年のアルバム「ALL OF ME」というアルバムがあります。
これに入っております「クロール」という、佐藤君らしいAORのアレンジが施された一曲でございます。
♪ クロール /佐藤博
作詞が松本一起さんなので誰かに書いた曲ですかね。
セルフカバーですかね・・・
松本一起さん「硝子越しに消えた夏」
コーラスが、完全に一人で多重のコンピューター・ミュージックでありますが。
コーラスは私のライヴでお馴染み佐々木久美さん、今は亡きキャンディ、それからキャンディのお兄ちゃんの高尾直樹さんであります。
ギターだけ鈴木茂さんというパーソナルであります。
~ CM ~
◎ LADY BLUE /山下達郎
達郎氏:
さて、佐藤博さん、先週も申し上げましたがですね・・・・
本番でいきなり、いろんな事考えてくれて、本当に重宝な人なんですが。
その反面、ソロアルバムに関しては全部自分でやるというのが、自分の中のイデアと言いましょうか、自分の中の鳴ってる音の世界をそのまま完全に再現したいという。
私にちょっと似たところがあるんですけども。
そうしますと、一人で全部やっていかなきゃなんない。
そういう事を考える人でありまして。
ですので、だんだん、だんだん緻密になっていくんですが。
私のレコーディングも1970年代から80年代の頭くらいまでですね、その場で色んな事をパッと思いついて、やってくれてたんですけども。
どうも、それじゃ満足がいかなくなってきて、80年代の中期からですね、一回そこのセッションやった後に、そのテープを持って帰って、家で考えて、後日もう一度やらせてくれないかと、そういうパターンになって参ります。
古い付き合いなので、喜んであれしますと、またさらにですね、エスカレートしまして(笑)
間奏はハーモニカのソロのシンセでやったやつにして、とか段々こう、入って来るんですね。
そういう作品がたくさん出て参ります。
そんなようなものの、一番典型なやつを今日はお聴きを頂きたいと思います。
私の1986年のアルバム「ポケット・ミュージック」に入っております「LADY BLUE 」という。
これはアラン・オデイに英語の詩を頼んだ曲なんですが。
この曲はもう、正にそういう感じでありましてですね。
当日頼んで、いろいろ弾いてくれるんですが・・・・
『やっぱり、もうちょっと・・練習したいけど・・
これもう一回、やらしてくれへんかな・・・』
そいで家へ帰ってエレピを入れてもらって、その上にアコースティック・ピアノをかぶせて、先週お聴きを頂いたマンデーブルーみたいな、ああいう感じなんですが。
それで、間奏をですね、アコースティック・ピアノで初めはお願いしようと思ってたんですけど・・・
『ハーモニカをシンセの音で作って、それで作らしてくれへんかな』
ブレス・コントロールって言いましてですね、シンセをいわゆる口でコントロールする、ブレスコントロールする、息でコントロールする、そういうアタッチメントが出ましてですね(笑)
それを使いたいと(笑)
それで間奏は佐藤君のハーモニカの音で、シンセの音でハーモニカをソロをやるという・・・
そういうですね(笑)ものになりました。
そういう拘りがですね、自分の作品だけではなくて、人の作品にもだんだん拘りを見せてくるという、そういうのが80年代中期の佐藤博さんでした。
♪ LADY BLUE /山下達郎
いかにも佐藤君らしいピアノプレイでございますが。
◎FUTARI(ふたり) /山下達郎
達郎氏:
自分の作品で一番リクエスト多かったのは「FOR YOU」に入っております「FUTARI」であります。
たくさん頂きました。
これは是非、かけてみたいと思います。
♪ FUTARI(ふたり) /山下達郎
◎ エンディング
達郎氏:
というわけで2週間に亘ってお送りいたして参りました「佐藤博さん追悼特集」でございますが、まだまだかけたい曲がたくさんございます。
吉田美奈子さんのが一曲もかけられなかったのが、ほんとに残念です。
あと、たくさんリクエスト頂きましたが十分お応えできませんでした。
先週も申し上げましたが、いろいろな想い出話も沢山ありますけれども、こうして音を電波に乗せてですね、空に放って音を聴きながら想い出を語るという、これがやっぱりうミュージシャンなので、一番喜んで頂けるかと思いまして追悼特集、2週間に亘ってお送りいたしました。
とにかく、もう無類の新しいもの好きで、好奇心の塊で(笑)
そういう意味では永遠の少年というような人でありました。
佐藤君に限らず、あの時代の70年代くらいのスタジオミュージックっていうのは譜面に書かれてないことを皆で考えて、お互いにそれがコラボレーションになって、化学反応を起こして。
4人分、5人分の演奏がですね10人分、20人分に拡がるという、そういうような時代でありました。
とってもいい時代を生きられまして、ほんとに心よりご冥福をお祈りいたします。
最近、たくさん活動しておりましたが、最後にお聴きを頂きますのは2006年に発売されました「Amazing II」というアルバムで。
これいわゆる、本人はアップデート・ミュージックと自分の事言っておりましたが。
セルフ・カバー集なんですけど、セルフ・カバーじゃないなと。
音楽をタイムマシーンみたいに、そこで固定しないで、どんどん自分の中で新しく再構築していくアップデート・ミュージック・・・
そういうような事を・・・
今日はオリジナルの方を、昔のやつをお聴きを頂きましょう。
この中に入っております、いかにも佐藤君らしいですね、21世紀型の、いわゆる一人多重であります。
この十何年かはですね、ドラムの打ち込みがとにかく上手くて、本物のドラムとほとんど見分けがつかないくらいのドラムの打ち込みに凝っていた人であります。
そういうとこも、良く出ております。
これを最後におかけして佐藤博くん追悼特集、2週間に亘ってお送り致しました。
お開きにしたいと思います。
2006年のアルバム「Amazing II 」からタイトルソング「Amazing II 」
♪ Amazing II /佐藤博
今週のオンエア曲
14:05 SAY GOODBYE /佐藤博
14:08 Pom Pom 蒸気 /細野晴臣
14:11 福生ストラット /大滝詠一
14:16 バッド・ジャンキー・ブルース /佐藤博
14:21 クロール /佐藤博
14:31 LADY BLUE /山下達郎
14:36 FUTARI(ふたり) /山下達郎
14:44 Amazing II /佐藤博
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