山下達郎さん サンデーソングブック 2013年11月17日『私家版 岩谷時子追悼 Part2』
昨日の日曜日、長崎市内は雨。
達郎氏『私にとってはですね、多感な十代、歌もののの一番最初の入り口がですね、へんてこな歌謡曲ではなくて、弾厚作、岩谷時子だったことの幸運をですね神様に感謝しつつ』
歌ものの最初の入口・・・
自分がどんな音楽を聴いて育ってきたのか、振り返る良い機会になりました。
当時を思い出してみましょう。
ということで、このブログでは山下達郎さんのサンデーソングブックのほんの一部をテキスト化しています。
誤字脱字は、ご容赦くださいませ。
◎ 冒頭
達郎氏:
11月も後半に入って参りました。
私、また前倒しで録音しておりますが(笑)
先週は、もう、声がガラガラでございました。
お聞き苦しいところ、申し訳ございませんでした。
今週は大丈夫でございます。
昨日、よく寝ましたので。
こないだ、お酒飲みすぎて、寝不足でございまして。
ああいうことになってしまいました。
先週は、まつもと市民芸術館へ行って参りました。
松本のお客様、とってもいいお客様で、気持ちよくやらして頂きました。
先週は、その後、木金と福岡サンパレス、博多でライブだったんですが、実は、今日は前倒しでございます。
博多の前に録っておりますので。
たぶんうまくいってる筈でございます(笑)
いらっしゃった皆さん、ありがとうございました。
今週は東京シリーズです。
明後日、火曜日、府中の森芸術劇場 どりーむホール。
そして金曜日、土曜日、22,23とNHKホールでございます。
今週は東京でございますので、いくぶん身体の余裕がありますけれども。
番組の方は、そんなわけで、かなり前倒しでございますけれども(笑)
先週に引き続きまして、先日お亡くなりになりました作詞家、岩谷時子さんの追悼特集、今週もお届けを致します。
今週は、岩谷さんにとってはですね、最も重要なパートナーの一人でございます、作曲家、弾厚作。
こと加山雄三さんの作品を中心に。
私の一番多感な時に聴いて育った加山雄三さんと岩谷時子さんのコラボレーションをヒット曲を中心にお聴きを頂きます。
今日も、あんまり御託をこかないで進んでいきたいと思いますが。
先週も、あんまり御託をこかないと言いつつ・・・
今日はもうベタな曲ばっかりですが、あくまで私にとってのパートナーの特集でごいざます。
私家版と銘打って『私家版、岩谷時子追悼Part2』
今週の方が、より私家版。
先週、今週、昭和歌謡の真髄をお聴きいただきます。
曲はベタですが、音質は最高でございます。
これだけの音質で60年代歌謡曲を聴ける番組はサンデーソングブック、ただひとつと自負しつつ、今日もお届けいたします山下達郎サンデーソングブック。
日曜日の午後のひとときに、今日は加山雄三さん、岩谷時子さんの作品でお楽しみ頂きたいと思います。
先週もお聴きを頂きました、ただいまTBS系のテレビでオンエアされております毎週日曜日、午後9時からの日曜劇場「安堂ロイド」
これのテーマソングとして使われております、竹内まりやYour Eyes。
もともとは私の1982年のアルバム「For You」収められた曲ですが。
先週も申し上げましたが、もともとはYour Eyesてのは竹内まりや用に最初書いたんですけども、不採用になってしまいました。
で、自分でやったと、そういう経緯があります。
30年の時を経て竹内まりや自身のバージョンが生まれたというわけです。
今日もお聴きを頂きます、TVサイズ。
♪ Your Eyes (TV Size)/竹内まりや
~ CM ~
♪ 君といつまでも /加山雄三
◎加山雄三さん
先週は、ざっとそうしたディスコグラフィー、追ってまいりましたが。
今週は、越路吹雪さんと並びまして岩谷時子さんにとっての最も重要なパートナーの一人でございます、加山雄三さん。
弾厚作というペンネームで幾多のヒット曲を出しましたが、その大部分の作詞を岩谷時子さんが手がけました。
私にとっては中学1年の時に、生まれて初めて買ったレコード、初レコといいますがですね。
洋楽の初レコはベンチャーズだったんですが、邦楽の歌モノのレコードで生まれて初めて買ったのは加山雄三さんの「君といつまでも」であります。
中学1年の時でございます。
自覚的に主体的に音楽を聴き始める、丁度年頃、十代、ティーンエージャーですね。
私12才でございましたが。
その頃の一番最初に飛び込んできて感動したのが、この加山雄三さんの音楽でございました。
何曲も聴いているうちに、この作詞をしている方が岩谷時子さん、これが職業作詞家の名前を最初に覚えた一人でございます。
1965年の大ヒットナンバー「君といつまでも」
今聴きますとですね、加山雄三さんの好きなペリー・コモの空気がぷんぷんしております。
で、今日はですね、こうした加山さんの曲を沢山お聴きいただくんですが。
加山さんの当時の曲はですね、2つに分かれます。
こうした「君といつまでも」のような86モノのですね、森岡 賢一郎さんのアレンジによるバラードものと、それからバンドサウンドで構成されましたエレキもの。
これに大別されますが、今日は、そちらの後者のバンドもののヤツを、どんどんいってみたいと思います。
♪ 夜空の星 /加山雄三
♪ 蒼い星くず /加山雄三
♪ 夕陽は赤く /加山雄三
達郎氏:
1966年の加山雄三さんのヒットシングル「蒼い星くず」
B面の「夕陽は赤く」
どちらもヒットしました。
この「夕日は赤く」ってのはほんとに、死ぬほど好きで(笑)
このランチャーズの学生バンドぜんとしたですね、ブルージーンズとは違った、ちょとガレージっぽい演奏もいいですし。
頭のイントロのリフ、これも結構難しいんですよ
♪~ Gui.
なんつっても、シックスというコード、生まれて初めてそんなコード弾きましてですね。
これ、なっちゅうコードだと思って!
一生懸命コピーしたものでございます。
◎映画
達郎氏:
私は東京の池袋の生まれでありますが、池袋は映画館の街で。
池袋東宝という、東宝系の封切館がありましてですね。
そこで、当時はゴジラから始まりましてですね、クレージーの映画、それから加山雄三さんの若大将シリーズでございます。
エレキの若大将は封切りでは観なくて、あとで観ましたがですね。
封切りで観た初めてのヤツが1966年の「アルプスの若大将」
5月の末の封切りだと記録にありますが。
初夏に観た記憶がありますが、とにかくもう、当時の映画館ですが立錐の余地がない。
ようするに立ち見ですが、通路の階段に座ってみるんですよね。
そこで『アルプスの若大将』のですね、いろんな「ブライト・ホーン」とか「蒼い星くず」とか歌われるわけですが、一番印象に残っているのが、夕暮れのアルプスの斜面です。
雪の斜面で、加山さんがガット・ギターを弾きながら「モンテ・ローザ」を歌うんですが。
”こんな生活が世の中にあるんだ”と池袋の少年は思ったものでありましてですね(笑)
加山さんにその事を申し上げたら笑っておられましたがですね(笑)
今はいい時代でオリジナル・サウンド・トラックがありますがですね。
スタジオ・レコーディングじゃなくて、私のその青春の思い出であります1966年の映画「アルプスの若大将」のサウンドトラックから「モンテ・ローザ」
♪ モンテ・ローザ /加山雄三
岩谷時子さんのインタビューってのがありまして。
この「モンテ・ローザ 」という曲は、すごくスケールが大きい曲なので、詩を書くのがとっても苦労したと、そういうような事を仰っておられました。
この「モンテ・ローザ 」に限らずですね、歌詞の世界が不必要に主張することがないというですね。
完結な表現ですが、これがメロディーがのって、歌がのるとですね、全く違う意味に聞こえて来るという、歌詞の不思議ですが。
~ CM ~
◎いろいろ理由があるんですが
達郎氏:
今週11月20日にですね、ドッと山下達郎関係のアイテムが発売されます。
先日8月28日に出しました「MELODIES」30th Anniversary Edition。
83年のアルバム「MELODIES」の30週年記念。
それから「SEASON’S GREETINGS」20th Anniversary Edition。
1993年に発売しました、私のクリスマス・アルバム、「SEASON’S GREETINGS」の20周年記念盤。
これのアナログをですね、11月20日にリリース致します。
何回か申し上げましたが、初めは1枚もので企画していたんですけどもですね。
そうしますと「MELODIES」83年のアルバムに、クオリティーが遠く及びません。
それは、いろいろ理由があるんですが。
カッティングマシーンが、もう古いという・・・とか、システムがもう古くて、パーツがないとか。いろいろ問題がありまして。
当時の1983年は、もうアナログ盤の全盛期でございましたんで、その頃のクオリティは今は再現できませんで。
それに非常にびっくりしましてですね(笑)
いろいろ調べてみまして、結論は2枚組にしようと。
全部12インチ化して2枚組にして、4面ありますので、そこに全10曲をですね、2,3曲づつ配分することによって、音質のクオリティアップを図りまして、CDに負けないアナログ盤の音質を確保することができましたので。
どちらも2枚組で、やることになりました。
それで、すごく気になりましたんでですね、最近発売されてるアナログ盤を、片っ端から取り寄せて聴いてみましたら、やっぱり70年代、80年代のアルバムは、オリジナルに遠く及びません。
新譜はそうでもないですね。
例えばPREFAB SPROUT の新譜とかでアナログ出てるんですが、そういうヤツだとですね、割りとクオリティがいいんですけど。
いわゆる要するにマスターテープが劣化してるっていうのが一番大きな理由だと思いますが。
ま、長くなってしまいますので(笑)
今度またゆっくりご説明申し上げますが。
自信のアナログ盤です。
◎「クリスマス・イブ」
達郎氏:
同時に、11月20日、「クリスマス・イブ」のですね30th Anniversary Edition、「クリスマス・イブ」が30周年を迎えますのでマキシ・シングルの30th Anniversary Editionもあわせて発売するのに、またあわせて「クリスマス・イブ」のアナログ盤も出ます。
これも4曲入りで12インチ、180グラム、いい音しております。
「クリスマス・イブ」の30th Anniversary EditionのCDのシングル盤は、2000年代のあたまにですね、これがもう最後だと言って(笑)CDのリマスター盤を、4曲入り「クリスマス・イブ」本体とイングリッシュバージョン、ホワイトクリスマス、カラオケと、4バージョで10年以上ですね出しておりましたが。
なんと2013年に、またやるとは思いませんでしたが。
さらに突っ込んでおりましてですね。
最新リマスター、2013年最新リマスターで、今までの4テイクにプラス、アコースティックライブバージョンを追加しまして、5テイクで、リイシュー致します。
それに初回盤はショートフィルムを制作いたしまして、先日スポーツ紙なんかでも報道されておりましたが。
1980年に制作されましたJR東海のCMに出演していただいておりました牧瀬里穂さんにスペシャルゲストとして出演して頂きました。
このショートフィルムに出演して頂いております広瀬すずさん、98年生。
すごいですね、15才。
すごい可愛いお嬢さんです(笑)
ご覧ください。
このクリスマス・イブのショートフィルムを演出して下さった方が村松亮太郎さんという方で。
この方、映画監督なんですが。
今は一番脚光を浴びてるのはですね3Dプロジェクションマッピングといいまして、先日は東京駅がリニューアルした時にですね、東京駅で行いまして、たいへんな人気を博しました。
3Dプロジェクションマッピングというですね手法がありますが、これの今は日本といいますか世界の第一人者で活躍してる方で。
僕、すごく、それが気になってですね、お名前をアレしてたんですが。
なんと!その方が私の今回の「クリスマス・イブ」のですね30th Anniversary Editionに初回限定で入りますショートフィルムも演出して下さった方で。
たいへん素晴らしいフィルムになっております。
是非ご覧頂きたいと思います。
♪ 二人だけの海 /加山雄三
♪ ブライト・ホーン /加山雄三
◎島倉千代子さん
達郎氏:
今日は、加山雄三さんオンリーで終わろうと思ったんですが、この番組の収録の直前にですね、島倉千代子さんの訃報が飛び込んできました。
ご冥福をお祈り致します。
なので、島倉千代子さんを1曲だけ。
岩谷時子さんが作詞をされましたですね、1966年の作品でありますが。
当時、いわゆるムード歌謡、和田弘とマヒナスターズを代表する、ああしたラテン系ムード歌謡というのが全盛期でございまして。
それを島倉千代子さんに当てはめて大ヒットしました。
岡田みのるとヤング・トーンズをバックに歌われております。
島倉千代子さんの全作品の中で、わりとユニークなのですが、名作として知られております1966年の「ほんきかしら」
♪ ほんきかしら /島倉千代子
◎ エンディング
達郎氏:
というわけで2週間に渡りまして、作詞家岩谷時子さんの作品をお聴きをいただきながら追悼番組をやって参りましたが。
先週の番組のオンエアのあとにですね、私の大阪のたいへん親しい友人でございます吉住公男さんという、元大阪朝日放送の制作やってた方ですが。
その方からメール頂きましてですね。
ABCのホームソングというのが、昔、朝日放送で制作されていた、それに岩谷時子さんが、たくさん曲を書いていらっしゃいまして。
今日お聴きを頂きました「蒼い星くず」なんかも、そうしたとこから生まれた曲だそうで。
そのCDをですね、ABCのホームソング大全というのが昨年リリースされたんですが、それをリサーチしてたのが、この吉住さんで。
リサーチの中でですね、いろいろな事を感じられた事をメールにして送って下さいましたが。
それによりますと、関西における外来音楽の普及とか発展に一番貢献したのは宝塚と、それから阪神間のミッション系スクールだという・・・
この役割の大きさが計り知れないという。
岩谷時子さんは神戸女学院のご出身ですが、音楽情操教育にですね、そうした阪神の、大阪から神戸の間の多くのミッション系の学校というのが、音楽と情操教育に非常に力を入れていて、優れた作曲家や作詞家を教員として抱えてですね。
そうした後に活躍する人材育成に貢献したと。
そして宝塚歌劇というのは戦前から現在までですね、関西で随一のプロフェッショナルな音楽表現の場として歌手、作家ともに数多くの才能を輩出しているという。
そういう意味で、神戸女学院を卒業後、宝塚歌劇のスタッフになられて、それからそれを経て作詞家として大きな功績を残されて。
岩谷時子さんという存在はですね関西の洋楽文化を象徴する偉大な才能であったと、感じているという、そういうようなメールを頂きました。
関西の文化圏というのはですね、そういう大きさというのが戦前からありますのでですね、我々東京から伺い知れない深さというのを持っております。
私も東京の人間ですが、大阪でライブをやりますと、そうした大阪の観客のですね、懐の深さというのを非常に感じる、岩谷時子さんなんかもそうした流れから出た方だと思います。
蛇足ですが、加山雄三さんの「君といつまでも」、”幸せだなぁ”というあのセリフはですね、ご自分でお考えになったそうです。
岩谷時子さんのアイデアではないそうで。
完全な蛇足でした(笑)
というわけで2週間、岩谷時子さんの追悼特集をお送りして参りました。
心よりご冥福をお祈り致します。
私にとってはですね、多感な十代、歌もののの一番最初の入り口がですね、へんてこな歌謡曲ではなくて、弾厚作、岩谷時子だったことの幸運をですね神様に感謝しつつ。
先週申し上げましたが、私、岩谷時子さんの作品を歌ったことが2回あります。
1回目は先週お聴きを頂きました、竹野屋セントラルヒーティングの「恋のバカンス」ですが。
もうひとつ。
1998年の8月19日。
赤坂BLITZでですね、加山雄三さんとノーキ・エドワーズのジョイント・コンサートが行われました。
その時にハイパー・ランチャーズと加山雄三さんのゲストで行きまして。
「美しいビーナス」を歌いました。
「美しいビーナス」、加山雄三さん1970年のヒットソングでございますが。
これをライブで歌わせて頂きました。
この録音が残っておりますので、今日はそれを最後にお聴きを頂きましょう。
1998年の8月19日、赤坂BLITZ
加山雄三・山下達郎 with ハイパー・ランチャーズ
「美しいビーナス」
♪ 美しいビーナス -LIVE- (1998/08/19 赤坂BLITZ)/加山雄三・山下達郎 with ハイパー・ランチャーズ
今週のオンエア曲
14:03 Your Eyes (TV Size)/竹内まりや
14:06 君といつまでも /加山雄三
14:11 夜空の星 /加山雄三
14:15 蒼い星くず /加山雄三
14:17 夕陽は赤く /加山雄三
14:22 モンテ・ローザ /加山雄三
14:31 二人だけの海 /加山雄三
14:34 ブライト・ホーン /加山雄三
14:38 ほんきかしら /島倉千代子
14:45 美しいビーナス -LIVE- (1998/08/19 赤坂BLITZ)/加山雄三・山下達郎 with ハイパー・ランチャーズ
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