山下達郎さん サンデーソングブック 2020年02月09日『スコット・ウォーカー特集 Part.3』(#1426)
長崎市内、日曜日は気温も上がり、よい天気になりました。
今日のサンソン、いつの時代もスーパースターはイメージギャップとの闘い、葛藤があるんですね。
ということで、このブログでは山下達郎さんのサンデーソングブックのほんの一部をテキスト化しています。
誤字脱字は、ご容赦くださいませ。
◎ エクスキューズ
達郎氏:
山下達郎です。
本日放送のサンデーソングブックは、前倒しで録音しておりますので、コロナウィルス関係には言及されておりませんので、あらかじめご了承ください。
◎ 冒頭
達郎氏:
今日は、前倒し録音なので、お天気の話は申し上げられませんが。
明後日、2月11日が建国記念日でございます。
建国記念日はハッピーマンデーにはならないんですね。
あたりまえですか・・
なんか、動く日と動かない日がありまして。
なんだか。よくわかりませんがですね。
今年は、なんか山岸君の提言によりますと、4連休が多いそうでございます。
そんなに休んでどうすんだっていう・・
そんなこと言っちゃいけません!
休めるときには、休みましょう!
そんなわけで(笑)
ここんとこ、ずーっと続いておりますスコット・ウォーカー特集、いよいよパート3でございます。
佳境に入ってくると、申し上げたいところですが。
だんだん、ダークになってきますね。
私の手に負えなくなってきます(笑)
本日はスコット・ウォーカーの70年代中期、ウォーカー・ブラザース再結成から、長い隠遁をしまして、80年代、90年代へつながっていきます。
そこまではちょっと届かないかなっていう感じですけども。
だいたいの、そうしたアバンギャルドなですねシーンの中での活動は、おさえられたのではないか、というような感じでございますが。
で、今日のスコット・ウォーカーのカルト的な評価というのは、だいたいヨーロッパのサブカルチャー系のですねシンパシーがほとんどなんですけど。
私は、どっちかというと、ミドル・オブ・ザ・ロード系ですので(笑)
60年代のウォーカーブラザースにおけるそうしたポップヒットのインパクトなしにはスコットウォーカー語れないという。
そうしたアバンギャルドな、ご紹介する中でも、なるべく聴きやすいもの、選んで、選曲してみました。
ですので、一般的なこの時代の、90年代からですね2000年代の、スコット・ウォーカーの、いわゆるファンの人の選曲とは若干違います。
それは、60年代から聴いてきた人間にとっての、評価でございますので。
そのへんは、ご理解いただきたいと思います。
というわけで、御託が多いんですけども(笑)
すいません(笑)
スコットウォーカー特集パート3でございます。
こーんなにやったの、あんまりありませんね!
特集で。
スコットウォーカー特集パート3
本日も、最高の選曲・・か、わかりませんけれども、最高の音質でお届けをいたします。
山下達郎サンデーソングブック
本日も、自分の曲もかけないでスコット・ウォーカーに没入している特集でございます。
お知らせのあとに、いってみたいと思います。
~ CM ~
◎ The Plague/Scott Walker
達郎氏:
パート1、パート2をお聴きいただいた皆様には、もうおわかりと思いますけれども。
ウォーカーブラザースとして、イギリスに渡りましてですね、爆発的と言っていいブレイクをしまして。
なんつったってイケメンですからね。
スタイルもいいですし。
そいで歌が何よりも、唯一無二といってもいい、声質でございますので。
熱狂的な女性ファンを獲得したんですけども。
そのことで、自分の中での創造性とのギャップっていいましょうか・・・
そういうのに非常に悩んだというですね。
それがスコット・ウォーカーの人生だったと思いますが。
先週のパート2をお聴きいただければわかります通り、70年入るころからですね、そうしたアイドル的な活動に、だんだん嫌気がさしてきまして。
もっとヨーロッパ的なものを取り入れたいという。
あと、自分で作品を作りたい。
そういう意欲が出てきましてですね。
そういう萌芽がですね、実は60年代の終わりから見えておりまして。
先週おききをいただきましたソロ・アルバムの「スコット2」からのシングルカットでヒットいたしました「ジャッキー」という。
ジャック・ブレルのカバーでございますけれども。
このシングル盤のB面に入っていたにがですね、スコット・ウォーカー作詞作曲の「プレイグ」という。
カミュの作品からインスパイアされたという・・
これが1967年の作品でありますので、もうそうした80年代、90年代、そうしたアバンギャルドなものに対する萌芽がですね、このときにすでに表れております。
♪ The Plague/Scott Walker
うしろのディストーションのギターとかですね、ドラムのあれとか・・
そうとう細かく要求したという、そういうようなエピソードでございますが。
ちなみにこの「プレイグ」という曲はですね、86年にマーク・アーモンドがカバーしております。
◎ ロシア文化への造詣
達郎氏:
当時のスコット・ウォーカーは、本当に、あのぉ・・ヨーロッパ文明に耽溺したというですね。
インタビューを見てみますと・・
この特集をやるので、いろいろインタビューをみたんですけど。
ロシア文化に、かなり造詣が深いということがわかりまして。
そんなこと、昔は全く気付きもしませんでしたけども。
「スコット4」という69年のアルバム、この中に「The Old Man’s Back Again」というですね・・
これも今は結構カルトな人気がある曲なんですけども。
スパイの・・歌った歌なんですけども。
この中にですね、名前が出てくるのが・・
アンドレイ・ヴォズネセンスキーという、この人ロシアの詩人でありまして。
日本で加藤登紀子さんが歌ってた「百万本のバラ」を作った人であります。
ロシアのスターリン時代からスターリン批判になって、フルシチョフの時代に出てきた詩人なんですけど。
このアンドレイ・ヴォズネセンスキーとかですね、エフゲニー・エフトゥシェンコという人がいまして。
この人は「バビ・ヤール」という有名な詩がありまして。
これをショスタコービッチがシンフォニーにして・・やったんですけども。
「バビ・ヤール」ってのは、ロシアにあったナチの、ユダヤ人の収容所のエピソードなんですけども。
これをもとにショスタコービッチがシンフォニー書いたりしましてですね。
そうした時代の、そうした詩人とかに、非常に耽溺していたという。
ソルジェニーツィンはほとんど読んでいたという。
そういうようなインタビューがありまして。
私、このヴォズネセンスキーの詩を持っていましてですで(笑)
押し入れから引っ張り出して久しぶりに読んだんですけども。
そういわれてみると、スコット・ウォーカーの詩がですね、こういうところからきているっていうのが、なるほどなっていう。
なかなか、おもしろい話で。
これちょっと話すと長くなるので、また機会がありましたら、という感じなんですけども。
そんなようなものなので。
それじゃ、ウォーカーブラザースのポップとは相容れないなという感じでありまして。
どんどん、どんどん、そういうとこにはまっていったんですよね。
で、70年代の初期のアルバムっていうのは、むしろアメリカのソングライターの曲とかをやらされて、嫌だっ!ていう、そういう感じがありましてですね。
売り上げが落ちてきたので。
そこで昔のメンバーと一緒にウォーカー・ブラザースを再結成します。
1976年の話なんですけども。
そこで出しましたシングルが、全英7位というですね。
ヒットになりまして。
アルバムも出ることになります。
1976年の話ですが。
アルバムタイトルと同じタイトルのシングルヒット「No Regrets」
♪ No Regrets/The Walker Brothers
♪ Nite Flights/The Walker Brothers
◎ 沢田研二さん
達郎氏:
もうこの頃も完全にメンバーが隔離してますので。
ジョン・ウォーカーの歌う曲、スコット・ウォーカーの歌う曲、それからゲイリー・ウォーカーの歌う曲、そういう具合にはっきり分かれてしまいました。
えぇ・・そんな感じでございます。
要するに、ここの3週間、何度も申し上げておりますけれども。
いわゆるスーパースターの自分の中でのイメージギャップとの闘いと言いましょうかですね。
そういう感じでございます。
ですので、日本で一番近似な人といいますと、沢田研二さんかなと・・・
思われますけれども。
◎ 分解
達郎氏:
このあと、ウォーカー・ブラザースは分解してしまいまして。
このあと、スコット・ウォーカーは、また長い隠遁生活に入ります。
で、1984年にですねソロアルバムを出しますが、そこから強力なダーク・ワールドが展開されるわけでございます。
~ CM ~
◎ダーク・ワールド
達郎氏:
1984年に、久しぶりの・・
役10年ぶりのソロアルバムが発表になります。
「Climate of Hunter」というタイトルの・・
もう、何て言いましょうか・・
ダークな世界であります(笑)
この中から比較的わかりやすいやつ。
なんといっても、タイトルも・・
トラック3
トラック5
トラック6
トラック7
・・そういうようなものでございます。
この中から「トラック3」
♪ Track Three/Scott Walker
全然違う人の音楽に感じるかと思いきや・・
ちゃんとスコットウォーカーの気なんですね、これね(笑)
トラックもグルーヴしておりますし。
◎ 再評価
80年代入るころからスコット・ウォーカーの再評価みたいなことがですね。
スコット・ウォーカーの作品のコンピレーションとか、そういうものが出てきておりまして。
そういう流れのなかで、ぽつぽつ仕事はしていたみたいなんですが。
1992年にウォーカー・ブラザースとスコット・ウォーカーのコンピレーションCDがイギリスで出まして。
これが全英4位というヒットになります。
そういう意味では再評価なんですけども。
ビーチボーイズの「オール・サマー・ロング」とよく似ている感じがするんですけども。
そんな中で1993年にフランス映画の「可愛いだけじゃダメかしら」という・・
放題ですけども、すいません(笑)
これのサウンドトラックのために歌を要請されまして。
ゴラン・ブレゴヴィッチというサラエボ出身の映画音楽の作曲家ですけども。
この人の作曲でスコット・ウォーカーの作詞した作品がサウンドトラックに収録されることになりました。
1993年、オリジナルサウンドトラックから「Man From Reno」
♪ Man From Reno/Scott Walker
こんなようなことを、しつつ・・
1995年に前作から11年ぶりというアルバムが出ます。
「ティルト/Tilt」という・・・
この中から、今日は一番わかりやすいやつ(笑)
♪ Farmer In The City/Scott Walker
◎ このあと・・・
達郎氏:
このあとまた10年ちょっと経ちまして「ドリフト」というアルバムを出すんですけど、そこまでいけません(笑)
90年代中頃で終わってしまいますけれども。
でも、再三申し上げますようにオリジナルもあれなんですけども、歌の世界のですね・・
ほんとにアバンギャルドなやつで一辺倒かといいますと、そうでもないという。
さきほどのサントラの曲もそうですけども。
1996年に、これも映画なんですけども。
「To Have and to Hold」という映画がありまして。
Nick Caveが音楽担当してるんですけども。
このニック・ケーブの要請でボブ・ディランのカバーを歌っております。
このオリジナル・サウンド・トラックで。
ボブディランのナッシュヴィル・スカイラインというアルバムに入っております「 I Threw It All Away」をスコット・ウォーカーが歌っておりまして。
♪ I Threw It All Away/Scott Walker
たぶん、この時代になりますと、もう自分のそうしたアバンギャルドなものに対する評価というのが割と確定してきたので、こういうような少しですね・・リラックスしたものでも、いいやと。
そういう許容がしたのかなという感じもします。
でも、自分の作品は、あいかわらずすごくアバンギャルドで。
このあと、1999年にレオス・カラックスの映画「ポーラX」というもののサントラでありますとか。
わりとサウンドトラック精力的なものがあります。
2006年に最後のオリジナルアルバム「ザ・ドリフト / The Drift」という。
これもすごいアバンギャルドなアルバムですけれども(笑)
ここまで、今日は届きませんでした。
◎ お礼申し上げます。
達郎氏:
また機会があれば、と申し上げたいところですが。
たぶん、こういうような特集は二度とできないと思います。
この特集やってる中で、おたよりたくさんいただきまして。
リクエストもそうなんですけども。
やはりウォーカーブラザース時代からのスコットウォーカーのファンの方っていうのは、ほんとに女性の方、特に中心にですね、命かけてる方、たくさんいらっしゃいまして。
今回も、そうしたネットのブログでありますとか、そういうものを、ほんとに参考にあせていただきました。
ほんとに好きな方々はですね、そういう思いを込めて書かれた文章なので、ほんとに、ものすごく参考になりました(笑)
この場を借りて、ずべてお礼を申し上げられませんけれども・・・
お礼申し上げます。
ですので、たくさんリクエストいただいてますので、何週間か経ちましたら、ウォーカー・ブラザース、スコット・ウォーカーのリクエストにお応えしてですね、もう1週間やろうかなかぁ、なんて思っております。
◎ エンディング
達郎氏:
評伝、インタビュー、いろいろなものが書かれておりますけれども。
50年もたってきますと・・
わりとカルトな人なので、どこまでほんとかわからない・・というですね・・
そういうようなこともあります。
当時の音楽雑誌には、そこが悪かったとか、そういうものが書いてありますし。
さきほども申し上げましたみたいに、今の評価のほとんどは、割とヨーロッパ、イギリスのサブカルチャーからの評価でありまして。
でも、これも再三申し上げますけれども、60年代のウォーカーブラザースのポップヒットのそうした実績なしには、その後のスコットウォーカー語れませんので。
私は、ミドル・オブ・ザ・ロードの人間から、そういう考え方に基づきまして3週間特集をやらせていただきました。
歌唱表現と創作意欲とのギャップといいましょうかですね・・
歌が上手いひとで、ルックスもいいしですね。
トップスターなんですけど、自分の中の創作意欲のものは、そういうものではないギャップがですね、生む音楽のそうした・・感じといいましょうか・・
そういうものを感じていただければと思います。
言い忘れていたことがありますが・・・
これもスコット・ウォーカーの変人ぶりを物語るあれなんですけども。
どこまでほんとかわかりませんが。
スコット・ウォーカーという人はですね、自分がレコーディングした作品を二度と聴かないそうなんです。
ですので、昔の作品は覚えてないとか、そういう発言がありまして・・・
不思議です。
そんなわけで、尻切れトンボですみませんが、10年ほど残してしまいましたけど。
今日の最後は、これもオリジナル・サウンド・トラックですけれども。
2016年の映画『The Childhood of a Leader』、日本題は「シークレット・オブ・モンスター」という・・・
サルトルの短編小説を原作に作られた映画のサウンドトラックなんですけど。
これ、全面インストルメンタルであります。
歌、ありません。
それでもスコット・ウォーカーのクレジットでございます。
この中から、とっても短いんですけども、きれいな曲を1曲最後にお聴きをいただきたいと思いますが。
私、最近買ったCDの中で、最もストリングスがいい音しているCDでありました(笑)
すばらしいレコーディングであります!
てなわけで、これをお聴きをいただきながら、3週間にわたりましたスコット・ウォーカー特集、ご清聴ありがとうございました。
♪ Run/Scott Walker
今週のオンエア曲
14:06 The Plague/Scott Walker
14:13 No Regrets/The Walker Brothers
14:18 Nite Flights/The Walker Brothers
14:25 Track Three/Scott Walker
14:30 Man From Reno/Scott Walker
14:35 Farmer In The City/Scott Walker
14:44 I Threw It All Away/Scott Walker
14:50 Run/Scott Walker
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