ヤマザキマリラジオ #22 山下達郎が登場!(初回放送日:2026年10月12日 後半)
初回放送日:2026年10月12日
若き日の達郎さんが五木寛之さんと対談していたとは知りませんでした。
しかも、その対談「日本の音楽に様式はあるか?」が、2026年刊行の『五木寛之傑作対談集 Ⅲ』(平凡社)に収録されているとは! これはぜひ読んでみたいですね。
このブログではヤマザキマリラジオ #22 山下達郎が登場!(後半)初回放送日:2026年10月12日の一部を文字お越ししています。
誤字脱字は、ご容赦くださいませ。
※本記事の画像は生成AIを使用して作成しています。
- ジョン・フォードの名場面を彩る一曲――『リオ・グランデの砦』から始まる映画談義
- 映画はひとりで観る――山下達郎が譲らない鑑賞スタイル
- 字幕か、吹き替えか――日本とイタリアでこんなに違う映画の楽しみ方
- 感動に必要なのは600万円のオーディオより「想像力」
- ネタバレ、倍速、情報過多――映画を「観たつもり」になる時代に
- 「世の中を恨んでたんです」――若き日の達郎と五木寛之の対談
- ついに『JOY 2』!――37年ぶりのライブ盤と1670テイクの記録
- 18年分のライブ音源をどう選ぶ?――演奏の記憶と録音技術の進化
- 札幌の『土曜日の恋人』――時代も会場も超えて届くライブの音
- 『JOY 2』のブックレット――ヤマザキマリが描いたメンバーの素顔
- 『JOY 3』はもう始まっている――収録しきれなかった膨大な音源
- 16年の時間差を消す――達郎が語るライブ音源の立体感と音作り
- 初回盤4枚目の宝物――『LET’S DANCE BABY』に織り込まれた音楽史
- 「声が出る間は歌う」――達郎が語る禁酒とライブへの思い
- 29枚組のギーゼキング!――山下達郎を育てたクラシックの記憶
- 『SPACE CRUSH』誕生秘話――雨雲に隠れたサンシャインとバベルの塔
- 忘れられないライブは?――ダニー・ハサウェイから桑田佳祐まで
- まだ生きているカブトムシ!?――ヤマザキマリの尽きない昆虫愛
- ソロ50周年、時をかける歌声――二人が語る創作の歳月
- 『バキ』に『ドンケツ』――達郎とマリをつなぐ漫画の世界
- 音楽も漫画も異業種から学ぶ――手塚治虫の言葉と雑学の力
- 『BIG WAVE』のテーマに重なる、達郎の音楽を形作ったもの
- 「うん、うん」を控えた約2時間――最後まで息の合う二人のトーク
- 締めくくりは恒例の聴き逃し案内――「らじる★らじる」でまた会いましょう
ジョン・フォードの名場面を彩る一曲――『リオ・グランデの砦』から始まる映画談義
ヤマザキマリ:
おはようございますが最も似合わない声のトーン。
山下達郎:
すいません。(笑)
ヤマザキマリ:
いやいいんですよ。というわけで、今かけてる曲は、えー映画『リオ・グランデの砦』の挿入歌なんですけど、「Down By The Glenside」っていう
山下達郎:
サンズ・オブ・パイオニア。
ヤマザキマリ:
はい、サンズ・オブ・パイオニアが歌ってる、これ素晴らしくないですか。私これ聴いた時に、もう崩れ落ちそうになって。
もうこのジョン・フォードのそのアイルランドリスペクトはよくわかるんだけど、これ本当にアイルランド独立のためのそのフェニアンっていう人たちをこう励ますための曲らしいんですけど
なんだろうこの曲調というかですね。これちょうど話の中でモーリン・オハラが演じるジョン・ウェインの奥さんが、ほら、息子を連れてきて、わーって揉めてる時に、ちょっと夜にね、これ聴いてみんなすごいこう、心を沈ませるっていうシーンなんですよ。
素晴らしいんですよこれ。映像がまためちゃくちゃ綺麗でね。
山下達郎:
私のあの『コレヒドール戦記』のね、あのシーンと全く同じですね。
ヤマザキマリ:
そう。そこのシーンとちょっと被りますね。私の中ではね、やっぱりね、このジョン・フォードってのは一応日本の伊藤大輔と、ま、大河内傳次郎じゃないけどなんかそういう組み合わせに近いのかって思ってね、なんかね。うん。
山下達郎:
ジョン・フォードと、あれね、ジョン・ウェインがね。
ヤマザキマリ:
はい。ジョン・ウェインがあのほら、最後に1人でバーンってドア開けて、あのあれだ、『捜索者』ね。あれかっこいいよね。1人で生きていく男のね。
山下達郎:
背中だね、あのシーン。
ヤマザキマリ:
そう。やっぱり男はああじゃなきゃなって最近思うようになってきました。
山下達郎:
うん。
映画はひとりで観る――山下達郎が譲らない鑑賞スタイル
ヤマザキマリ:
最近あの、映画館とか行かれました?
山下達郎:
えーと。
ヤマザキマリ:
行ってないか、忙しいから。
山下達郎:
最後見たの何だろうな。ちょっとね、あの、家で見すぎてるんで。
ヤマザキマリ:
そうですよね。どれを映画館で見たか思い出せないんじゃないですか?
山下達郎:
その『泳ぐひと』の後見てないかなあ。えー、いや、そんなことないな。
ヤマザキマリ:
うん。映画館に行く時ってどんな風にして行きます?1人で行って
山下達郎:
1人で行って1人で見て1人で帰ります。
ヤマザキマリ:
なんか食べたりとか飲んだりします?
山下達郎:
しません。
ヤマザキマリ:
もう映画だけ集中して見て帰るんですね。
山下達郎:
そうです、水だけです。
ヤマザキマリ:
じゃあ身の回りで、あのポップコーンとかむちゃむちゃ食べてる人いると、
山下達郎:
まあ、でも、あの
ヤマザキマリ:
ガサガサするとかそういうの気にならないですか?
山下達郎:
それ、別にあの集中してるから大丈夫です。
ヤマザキマリ:
素晴らしい。でも1人で行くという風にやっぱり決めてらっしゃる。
山下達郎:
基本的には1人で見ますね。昔から1人だったからこれからも1人だって。
ヤマザキマリ:
わかる。でも映画はなんか1人で見に行った方がいいですよね。
山下達郎:
4人5人でワイワイやんの嫌いなんですよ。
ヤマザキマリ:
うん、わかる。
イタリア人達とみんなで行くでしょ。絶対ね、2、3回も見たやつがあらすじ喋り始めるんですよ。
山下達郎:
はぁ。
ヤマザキマリ:
うるさい、お前ちょっと出ろって言って、もうあの取っ組み合いの喧嘩になったりとかね、ありますよ。映画のあらすじ喋りやがったお前のせいで。
山下達郎:
イタリアって面白い国だな。
ヤマザキマリ:
いやイタリアもね、すっごいリアクションだってさっきほらテレビに向かって話しかけるって話をちょっとね、休憩の時にしてたけれども、イタリアの場合は、あの、画面に向かってね、すごい役者とか出てきてすごいこと言われたり、「うおー、すごい」とか言って手叩いたりしちゃいますからね。
それ昔の日本とかそうだったと思うんですけど、今やんないじゃないですか、そういうこと。
でもイタリアはまだやってるところがあるね、なんかね。
山下達郎:
なるほど。
ヤマザキマリ:
激しい。
山下達郎:
激しい。抑えられない情動が。
ヤマザキマリ:
だから映画が終わって帰ろうとした時はもうみんな見た感想べちゃくちゃべちゃくちゃべちゃくちゃって喋るから集中して考えられない。
だから1人で見に行くのが一番いい。
集中して考えられない。もう自分の余韻に。
だから『泳ぐひと』なんか見に行った日は終わりですよ、はっきり言って。
山下達郎:
昔ね、ブルース・リーが全盛期だった時、みんなね、映画館から出てくる時はみんなブルース・リーになっちゃって、なりきってみんな出てきましたけどね。
字幕か、吹き替えか――日本とイタリアでこんなに違う映画の楽しみ方
ヤマザキマリ:
影響を受けやすいんですよ、映画っていうのはね、何事もね。
最近はさ、なんか映画もこう日本はあの吹き替え派が増えてきたっていうことなんですけど。
山下達郎:
そうなんですか。
ヤマザキマリ:
そうらしいですね。昔は吹き替えは嫌だって言って徹底的にとにかく字幕じゃなきゃ嫌だっていう人もいたはずなんですけれども、どちらかというと今は吹き替えの方がいいという人が多いそうです。
山下達郎:
へえ。あの、僕の知り合いでやっぱり吹き替えが好きな人がいて。それは要するにその、字幕を追ってるとシーンの細かいところが見れないから。
ヤマザキマリ:
ああ。
山下達郎:
っていうね。
ヤマザキマリ:
イタリア人みたいなこと言ってますね。
山下達郎:
イタリアは全部吹き替えなんですか?
ヤマザキマリ:
全部吹き替えです。
イタリアはもう字幕っていうものが存在しないです。例えば古い映画だったり古い日本の映画なんかを見に行くと、まあやむを得ず字幕になってたりするけれども、新しい映画は全部吹き替えですね。ほぼほぼ。
なのでそれを吹き替える人と役者も全部決まっちゃってるんで、
山下達郎:
ああ、なるほど。トニー・カーティスが広川太一郎さんだって。
ヤマザキマリ:
そうですね、あの
山下達郎:
若山弦蔵さんがこれだってやつですね。
ヤマザキマリ:
そうですね。ああ。でもね、別に字幕があったからといって映像が見れてないわけじゃないじゃないですか。私もどちらかと言ったらやっぱり字幕の方がいいんだけど、
山下達郎:
僕、小さい時から字幕一辺倒だったんで、結構訓練ですよそんなもん。
ヤマザキマリ:
ですよね。画像を観ながら文字の記号を頭に入れていくっていうことが。
山下達郎:
で、わかんなかったら2回見りゃいいんだ。
ヤマザキマリ:
そう。うん。私一度なんだっけな、自分のインタビューがイタリアか何かで吹き替え入ってるの見たことあるけど、めちゃくちゃ高い声、「これ誰よ?」っていうね。私のこのイメージで低い声ではなかったんだなみたいな感じになって。
山下達郎:
まあな。うん。
ニュースなんかで、あの、悪意がある、あの吹き替えだとか、
「おれはなんとかで」
ヤマザキマリ:
そう、あと田舎もんだと、「わしゃなんとかだ」そんなこと言ってないんですよ。だから私テレビの人に言ったことあったんですよ、「これは吹き替えにね、あの田舎だからという先入観でつけちゃいけません。この人は田舎の人だけどちゃんと敬語を使って丁寧な言葉で喋ってますよ」って。それやらないっすね。
山下達郎:
悪意ですね。
ヤマザキマリ:
悪意ですよね本当にね。
感動に必要なのは600万円のオーディオより「想像力」
山下達郎:
これなんですか?
ヤマザキマリ:
あ、立体音響、あ、そのなんか今あるじゃないですか、立体音楽音響効果みたいな。
山下達郎:
興味ないです。水飛んできてどうすんですかそんなの。
風吹いてきて水飛んできて。問題はイマジネーションでね。トランジスタラジオで聴いてもあの600万円のあのなんていうの、ハイエンドオーディオで聴いても、感動は同じなんですよ。
山下達郎:
で映画も同じで、あの、極端な話ですけど、あの、本当に猫の額みたいなスクリーンで見ても、70ミリで見ても。まあ『2001年』はどうか分かんないけどね、ああいうのはスペクタクルだから。
でもドラマだったらテレビドラマで感動する、のがブラウン管で感動するやつが、なんつうの、70ミリじゃなくてあれだっていうような、言いたいことはわかるでしょ。
ヤマザキマリ:
わかるわかる。想像力さえあれば何でも補えるってことなんですよね。
ただその想像力をまあなるべく使わないで楽しめる方向に行こうねっていうのがなんかこういろんなテクノロジーによって。
ネタバレ、倍速、情報過多――映画を「観たつもり」になる時代に
山下達郎:
情報量が多すぎるんです。だから、あの、昔はね、だから一度に3つのこと、あの聞けりゃいいんだけど、今一度に100個のこと聞かなきゃなんないから、だからイントロ省いて、あの倍速にして、で見たつもりになる。
でそれブラッドベリの小説にそういうのがあって、要するに一生分を2時間で、見たと同じみたいな。
ヤマザキマリ:
そうか、だから達郎さんが言ってる想像力が多いってのは、要するに想像力を鍛えるのではなく、情報を多くする方がなんか得した気持ちになるってことですよね。脳みそのさ、結局そのなんていうの、鍛えていくっていうのは、想像力を鍛えていくのは時間がかかることだけど、情報を増やすことに関しては2倍速で見たつもりになった方がどんどん頭が良くなってるつもりになるってそういうことですかね。
山下達郎:
あらすじを見ればそれで見たことになるのか。そのなんていうのかな、役者の演技っていうか、その振り向いた時にその人が何を考えてるとかそういうところまで映像作家が考えて・・、そんなことどうでもいいんです。
そいつが振られるか、あのこの恋が成就するかハッピーエンドなのかつって。
だから、あの極端なこと言うと、映画ラストの5分見て、どういうのかあれしてそれから頭から見ていくっていうね。
ヤマザキマリ:
それは、あれです、最近の若い人たちが最初にあらすじを知りたがる。でそれから映画を見に行く人たちが多いんですって。何でかって言うとそのサプライズがあると嫌なんですって。
山下達郎:
気が弱いの。
ヤマザキマリ:
予定調和で見たいんですって。だから、「ああ、知ってる知ってるこの通り」ってか、ほら、美術館に行くのもあらかじめ見に行くその美術家の勉強してから行くでしょ、日本とかなんて。
山下達郎:
だからライブもそうですね。
ヤマザキマリ:
あれ私ナンセンスだと思うんだけどな。
山下達郎:
ライブも勉強してね、聞いてから行くんです。
ヤマザキマリ:
じゃあ山下達郎も全部聞いてから行くんだ。
山下達郎:
あの、僕のお世話になった音楽評論家の方が、歌舞伎が好きでね。
歌舞伎はああいう浄瑠璃の語りが、聞こえれば、全部それで説明してくれるから何にもいらないんだよと。
ストーリーも全部そこで説明してくれるしね。
だけど今浄瑠璃の語りを聞く能力がなくなっちゃったんで、字幕を入れたりしなきゃなんないんだけど、それさえなけりゃ、文楽だろうが歌舞伎だろうが、常磐津とか、あのあるそういうとこで言ってることで全部わかるからね、まあそういうようなことですよね。
ヤマザキマリ:
そういうことです。だから想像力をもうますます持って鍛えない方向に向かっている。
山下達郎:
だから、何度も言いますけど昔より情報量が多いからね、しょうがないんですよ。
ヤマザキマリ:
いやうん、だけどそんなにさ、知らなくていいじゃないですか、知らなくていい情報だって山のようにあるのに。
山下達郎:
知らないとダメなんだっていうね、その教養主義っていうか。
「な、そんな言葉知らないの?」っていうことを言われるのが恐ろしいから、だから一生懸命、あの表層的な知識でも「ああ、それね」っつってね。うん。そういう会話を。
ヤマザキマリ:
まあ広く浅く知るよりはね、深くどこまでも行っちゃうぐらいの方が私はいいんじゃないかと思うんだけどね。そうじゃないんですかね。
山下達郎:
短い人生ですからね。しょうがないですね。
ヤマザキマリ:
はい、もう人の生き方はそれぞれなんでね。
山下達郎:
いいんじゃない。自分がどうかっていうだけでいいです。
「世の中を恨んでたんです」――若き日の達郎と五木寛之の対談
ヤマザキマリ:
丸くなりましたね。これが山下達郎が20代だったらどんな風な切れ方してたのかなと思うけど。
山下達郎:
世の中をね、ダメですよ。
ヤマザキマリ:
だってあの五木寛之さんと昔ラジオに出た時のあの凄まじいですよ生意気ぶりがね。
山下達郎:
世の中恨んでたんです。
ヤマザキマリ:
いや、でもそれをね、五木さんは本当に素晴らしいインタビューだったって言ってね、後世、もうだいぶ今になってね、印象深かった対談相手が山下達郎さんだったっていう。素晴らしいじゃないですか。
山下達郎:
光栄なことです。
ヤマザキマリ:
生意気は生意気なりにやっぱりね。
山下達郎:
手紙書きました。
ヤマザキマリ:
五木さんに?
山下達郎:
はい、礼状を書きました。
ヤマザキマリ:
ああ、でも今や五木さん側の立場になられてますね。
山下達郎:
私あんまり人の話聞きたくないんですよ。
ヤマザキマリ:
あ、そうなんですか。
山下達郎:
だからそういう具合になんか人と対談して、そのなんかその人の何を考えてるかというそういう。
ヤマザキマリ:
こういうとこに来てこうやって喋るのはなんかわりかしめんどくさいなとか思ってます?
思ってませんよ、ね。
山下達郎:
思ってません。はい
ヤマザキマリ:
せっかく来てるんだからね。
山下達郎:
決してそのような。はい(笑)。
ついに『JOY 2』!――37年ぶりのライブ盤と1670テイクの記録
ヤマザキマリ:
この貴重な時間をみんな山下達郎さんの話を聞きたくてみんな聞いてるんですからね、ラジオ。
じゃあ、えっとライブの話さっき出たもんですから、ちょっと早速ですが、このずっとこう出るんだ出るんだと言って出なかった『JOY 2』が。
ようやく聞けるようになりましたね。
山下達郎:
はい。ようやく公開してもいい段階になりました。はい。
ヤマザキマリ:
私が『テルマエ・ロマエ』が要するにヒットしてから、まあ山下さんのえっとライブに行くようになったんだけど、それ十何年前ですね。
その時からずっと『JOY 2』『JOY 2』って言ってて。
山下達郎:
すいません。
ヤマザキマリ:
十何年経ちましたね。
山下達郎:
すいません。足掛け30数年ですね、35年ぐらい『JOY 2』って言ってます。
ヤマザキマリ:
いや、素晴らしい。これがまたこだわって作られたみたいですね。なんかはい。
山下達郎:
テイクだけで1670ありましたんでね。
ヤマザキマリ:
ありえませんよ。それ全部聴いたんですよね。
山下達郎:
いや全部は聴いてないです。
ヤマザキマリ:
あ、全部聴いてない。
どうやって選ぶんですか?その、これ、この中にセレクトするのって。
ツアーの時からもう、当たり付けとくんですか。
山下達郎:
ツアー終わった時に「今日はいい出来だったか」あれだったかってのメモ取っとくんです。
ヤマザキマリ:
あ、なるほど。じゃあダメだったのはもう元より選ばない。
山下達郎:
そうです。星3つとか星1つとかそういう感じにして。
ヤマザキマリ:
じゃあずっとこの十何年のツアーの間、『JOY 2』のことを思い続けてそうやって丸をつけてきたってことですね。
山下達郎:
もちろんそうです。はい。
ヤマザキマリ:
素晴らしいですね。
18年分のライブ音源をどう選ぶ?――演奏の記憶と録音技術の進化
山下達郎:
でとりあえず、それはソースの問題なんですけど、80年代のソースはやっぱアナログなんで、テープの状態とかそういうの全部チェックしないとなんないんで。で1回『JOY』って最初に、89年に出した『JOY』の時のアーカイブしたやつはもうそれももうへたってるので。
それを再アーカイブするあれだと膨大な時間かかるので、とりあえずこの再、再開した2008年からのツアーの18年分で、作りました。
だそれだともう完全デジ化できてるので。
でそれのメモは全部あるので。
ヤマザキマリ:
なるほど。
山下達郎:
2016年か7年以降は、レコーディングの環境が良くなったんで。
いわゆるバスにコンソールがある機材車って言うんですけど、それを会場の表にとめて、そっから回線をあれしてレコーディングするってのは昔の要するにライブレコーディングのやり方だったんですけど、今はPAのコンソールからパラって、全ての音をハードディスクに録音することができるんで。17年以降は全公演録ってるんです。
ヤマザキマリ:
なるほど。何ヶ月くらいかかりました?
山下達郎:
半年です。
ヤマザキマリ:
半年。でも半年毎日毎日聞いてたんすか。
山下達郎:
いや、毎日毎日ってわけじゃないです。まあそうですねでも・・
ヤマザキマリ:
ですよね。私が記憶してると毎日毎日なんか聞いてらっしゃったなって思って。でその中からさらにこうブラッシュアップをしていく。
山下達郎:
そうです。『ライド・オン・タイム』のOKテイクで21ぐらいあったんで、それを1つ少しずつ聞いてって、最終的に3つ4つにしたら仮ミックスにして、それで聞いてOK出す。
ヤマザキマリ:
いや、だから私が驚いたのは、例えばこう拍手で繋がって次の曲に流れていくじゃないですか。でもそれが全然違う年の違う会場でやってるものなのに、そんな風に感じないんですよ。
山下達郎:
メンバーが同じですからね。
ヤマザキマリ:
いやびっくりですよ。いやあすごいなと思って。
山下達郎:
で思ったより、声が、変な言い方ですけど劣化してなかったから。
だ割と、同じ声質で、だから現実に2009年からなんですけど、9年から、去年のやつまでそんなに変わりがなかったんで、それはよかったです。はい。
ヤマザキマリ:
なるほど。だけど膨大な時間がかかってるわけですよ、ちなみにこれ3枚組で、ね、『JOY 1』から何年ぶりだっけ?
山下達郎:
はい、37年ぶり。
ヤマザキマリ:
37年ぶりってことは『JOY 1』が出た時に生まれた子供が37歳か。
なんつうんですかね、日本語でこういうのって。
切願じゃなくて渾身じゃなくて、ずっと待ってたって、なんて言うんですか。
山下達郎:
待望ですか。
ヤマザキマリ:
待望の、待望の、切望とも言いますか、本当にいろんな方たちがいつ出るのかなと思って待ち続けてた切望の『JOY 2』。
まずはちょっと1曲お聞きいただきましょうかね。
山下達郎:
じゃあ、何かお聞きになりたい曲ありますか。
札幌の『土曜日の恋人』――時代も会場も超えて届くライブの音
ヤマザキマリ:
えーっと、いや、色々ありますけど
どうしようかな。ワンツースリーと色々あるけれど、じゃあまずは、みんなが大好きな『土曜日の恋人』でも言ってみましょうか。はい。
山下達郎:
お願いします。これ札幌ですよ。
ヤマザキマリ:
おお、これあれ、hitaruになってからですか。
山下達郎:
そうです。
ヤマザキマリ:
よし、私聴いてるかもしれないね、これね。札幌ですよね。はい。じゃあ、えー札幌文化芸術劇場hitaruで2019年に録音された『土曜日の恋人』。
♪ 土曜日の恋人 (2019年10月09日 札幌文化芸術劇場hitaru)
ヤマザキマリ:
『土曜日の恋人』をお送りいたしました。感慨深いですね。
何ですかこの音質。ここで聞いてるみたいじゃないですか、ライブを。
やっぱりね、6歳からね、木琴で『リオ・ブラボー』のテーマ弾いてたらこうなるんですよ。わかんないけど。
これでも何回ぐらいリテイクっていうかこう聞いて聞いて、微調整とか。
山下達郎:
あ、それはもうエンジニアがオタクなので、はい、大変です。
ヤマザキマリ:
すごいですね。
山下達郎:
でもね、ちょうどいい時にね、色々なこういうレコーディングのテクノロジー、アナログ、デジタル、そういう機材、アナログ機材、デジタル機材、そういうのがね、すごくここの数年でものすごく発展したんで。
だちょうどいい時にね、作れました、はい。
ヤマザキマリ:
いや、いいと思います。
山下達郎:
これ5年くらい前だともうちょっと悩んだ。
『JOY 2』のブックレット――ヤマザキマリが描いたメンバーの素顔
ヤマザキマリ:
今まさになんか熟した時期だったってことですね。
このブックレットっていうかこのアルバムのイラストは
山下達郎:
アンドレ・ミリポルスキー、前の『JOY』と・・・
ヤマザキマリ:
37年後にまた描いた。その割にはタイムラグを感じさせないデザインですね。あー、はい、楽しい音楽的な、これこそ本当に音楽的なリズミカルなデザインだなと思いますけど。
実は私、中に、メンバー全員のイラストを描かせていただいておりまして。
山下達郎:
メンバーの写真じゃなくてイラストです今回は。
ヤマザキ先生に描いていただきました。
ヤマザキマリ:
はい。全員の顔をちょっと若干シワなど省きつつ。
山下達郎:
みんなだいぶお年を召してきましたが。
ヤマザキマリ:
いや、まあでもみんないい顔してますよ。
皆さんの極力笑顔の、この、はい、顔で描かせていただきましたけど。
山下達郎:
ライブアルバムで18年分入ってるアルバムなんて歴史的にないです。
ヤマザキマリ:
ないですね。
歴史の教科書みたいですねこれね。山下達郎の歴史のこの37年分っていうことで。
『JOY 3』はもう始まっている――収録しきれなかった膨大な音源
山下達郎:
でもですね、とてもオーバーフローしてて全く入ってないんですよ。
ヤマザキマリ:
え、じゃあ予定していたものが全部入りきらなかったってことですか。
山下達郎:
予定は入らないと思ってたんですけど、想像以上に入りませんでしたので、
ヤマザキマリ:
ええ、どうするんですか、その入りきらなかったやつは。
山下達郎:
『JOY 3』です。だから。
もう早くも『JOY 3』のアーカイブに入って・・
ヤマザキマリ:
もう入ってるんですか?すごいな。もう狼少年どころか今度一転して、もう大盤振る舞いになっちゃいましたね。
山下達郎:
もうこれ一種の終活ですね、こうなるとね。
ヤマザキマリ:
終活。もうこれじゃあ4ぐらい、4までいく。
山下達郎:
ええ行きますね、これ。
16年の時間差を消す――達郎が語るライブ音源の立体感と音作り
ヤマザキマリ:
へえ、いや嬉しいですよ、聴く側は嬉しいですけど、でもこれって、要するに通常のアルバムと作り方違うわけじゃないですか、いろんな意味で。どういうところがやっぱり大変ですか一番。
山下達郎:
あ、やっぱりだから音質揃えんのがね、タイムラグを感じさせないように。だ『JOY 1』の時もそうでしたけど、時は10年ないんで。まだ楽でしたけど、これは結構やっぱり16、7年タイムラグあるんで、それが一番気使いましたね。でも思ったより、大丈夫でした。それはおかげ様で。
ヤマザキマリ:
でもこうやって聞いててもさ、本当にステージを目の当たりにしてるような。
山下達郎:
その遠近感がね、10年前は出なかったんですよ。
全部こう前にへばりついてて、デジタルの弱点だったんですけど。
そのエコー感とか音像感とか、コーラスがちょっと後ろに定位してる感じとかが出せなかったんです。
でもようやくそれができるようになっちゃう。
でこれ、ハイエンドで96kHzの24ビットでやってるの、まあ44.1で16ビットにしてますけど、元のソースがそれでできてるんで44.1になっても結構ね、その立体感がね、死なないで残ってるんです。
ヤマザキマリ:
山下達郎のライブを目の当たりにしてるような感覚ってのは、この1枚、この1枚じゃねえや、3枚ですか?
山下達郎:
3枚。ええ、初回版4枚です。
ヤマザキマリ:
初回版4枚。初回版4枚、でどういう風に振り分けてるんですか、1枚1枚。
山下達郎:
それぞれが1つのライブみたいな構成にしてるんです。起承転結。
ヤマザキマリ:
なるほど、なるほど。
初回盤4枚目の宝物――『LET’S DANCE BABY』に織り込まれた音楽史
山下達郎:
で4枚目はですね、ここの10、20年ぐらいシングル出してきましたけど、シングルにライブバージョンが入ってるんですよ、いくつか。それをリミックスして全部、入れ直して、まとめて、あと、だかそれでアコースティックでやってるやつとかあるんですけど。
あと『LET’S DANCE BABY』って私のライブのね、おなじみの曲があって、それでいつも歌い込みっていうか折り込みやるんですよ。んで、それずっとやってきたんですけど、色々傑作があって、『LET’S DANCE BABY』を作詞していただいた吉岡治さんっていう方がね、演歌の大御所の方で、『大阪しぐれ』とかね、『おもちゃのチャチャチャ』とかね、そういうの色々書いてらっしゃる
山下達郎:
その吉岡さんの曲をメドレーで織り込んで、あとは我々の昭和の時代には懐かしいグループサウンズを織り込んで、あと大瀧詠一さんが亡くなった時に大瀧さんのトリビュートを歌い込んで、それ3つ入ってます。
ヤマザキマリ:
てんこ盛りですね。待たせただけあって。
山下達郎:
だから、長いですからね。全部で、えっと、214分ありますから。
ヤマザキマリ:
えーっと、もう4時間近くあるってことですか?
山下達郎:
そうですね、えっと…ボーナスディスク入れると240分ちょっとかな。
ヤマザキマリ:
ふーん、じゃあ4時間ですね。
山下達郎:
だからゆっくり、のんびり聴いてください。それを。
ヤマザキマリ:
うん。サービス満点ですね。こういう、こういうの利他精神っていうんですかね?
ミュージック利他精神。すごい、だって近年稀に見るじゃないですか、この密度の濃さ。
山下達郎:
すいません。濃すぎて嫌われるっていう。
「声が出る間は歌う」――達郎が語る禁酒とライブへの思い
ヤマザキマリ:
いやいやいや。いや、でもこういうの出してもらわないとね、やっぱりね。はい。あのブックレットにはとにかく歌う達郎さんの、写真も山のように出てますんで、これを見ながら曲を聴いてライブに行ってるようなつもりになってると、絶対ライブに行きたいって思うようになる人、山のようにいますよね多分ね。
でも達郎さんはまだライブはずっとやり続ける…。
山下達郎:
まあ、声出てる間はね。
ヤマザキマリ:
いや、それはまだ当分出るでしょうね。
山下達郎:
おかげさまで、でもお酒やめたらね、調子がいいんです。はい。
ヤマザキマリ:
すごいですね。でもそれでやっぱりお酒をやめられたことが画期的なあれだったんですか?
山下達郎:
画期的ですね。ええ、それはコロナになって…。
ヤマザキマリ:
うんうん。
山下達郎:
それでその後にお酒しばらくあれしてライブ始めたらなんか調子がいいんで。やっぱり酒は…。
で、良くないのはね、ライブ本番終わってから酒飲むんですよ、みんなね、打ち上げだとか言って。あれが良くないんですよね。
ヤマザキマリ:
でもさ、私と達郎さんと立川志の輔さんと桐竹勘十郎さんと4人で高島会っていう会があるじゃないですか。すると志の輔さんと勘十郎さんが必ず「いいですね、やめられて。どうやったら…」っていつもなんか、しみじみそういう話されるじゃないですか。
ねえ。だから本当にやめるっていうことはまあ、なかなかやっぱりこう決断…。
山下達郎:
お酒やめるの難しいですよ。
ヤマザキマリ:
ねえ。でも達郎さんいつも「いや、もう一生分飲んだからいいんです」って。
山下達郎:
そうですね。はい。
29枚組のギーゼキング!――山下達郎を育てたクラシックの記憶
ヤマザキマリ:
あ、今この達郎さんの『JOY 2』のね、出たアルバムの下になんかでっかいボックスがあるんだけど、それ何ですか?
山下達郎:
ワルター・ギーゼキングのね。
ヤマザキマリ:
なんで急にワルター・ギーゼキングなんですか?
山下達郎:
ギーゼキングの、えっと、生誕130年を記念して、えっと…彼がデビューして以来の、いわゆるオフィシャルレコーディングじゃない、ラジオのスタジオレコーディングの、ほとんどラジオのスタジオレコーディングですが、中にライブもあるんですけど、それを全部集めた、えっと…29枚組のCD。
ヤマザキマリ:
はあ?
山下達郎:
それとインタビューDVD。
ヤマザキマリ:
それを今日かけようと思って持ってきたってこと?
山下達郎:
いや、これをね…。
ヤマザキマリ:
自分のアルバムよりもぶっとくて目立つんですけど。
山下達郎:
ギーゼキングって言ったら、私あのドビュッシーとかラヴェルとか、ギーゼキングは最初なんで。
ヤマザキマリ:
ギーゼキング知らない人いるからちょっと説明してあげてください。
山下達郎:
あ、ワルター・ギーゼキングっていうのは戦前から活躍してるピアニストで、あの…。
ヤマザキマリ:
だってもう百何十年前でしょ、生まれたの。
山下達郎:
そうです、生誕130年。で、僕が最初に聴いた、ラヴェル、ドビュッシーがギーゼキングなんですよ。
ヤマザキマリ:
なるほど。
山下達郎:
それがモノラルでね。
ヤマザキマリ:
はい。それはいつどこで聴いたんですか?
山下達郎:
高校2年ぐらいの時に、僕の従姉妹がピアニストなんで。
ヤマザキマリ:
あ、はいはいはい。いつも話に出る。
山下達郎:
そこの仙台の、親戚のうち行って、そこにギーゼキングの、あのドビュッシーの『プレリュード』と、あれとあって、それを聴いてすごいなと思って。
ヤマザキマリ:
それが最初のピアニストなんて割とね、最初に聴いたピアニストってのがその嗜好性決めちゃう。私ディヌ・リパッティだったんだけど。ずっとやっぱりそのタッチのピアノが好きに…。
山下達郎:
リパッティはそのフランスの…。
ヤマザキマリ:
夭折した、うちの母の大好きだったピアニストですね。
山下達郎:
だいたい最初って、僕らなんかあんまり金がないから、安いEP買って、そうするとなんかあんまり有名じゃないやつの、あんまり上手くないやつっていうか、そういう、だからまともなね、ピアノを初めて聴いたんですよ、そこでね。
ヤマザキマリ:
なるほど、ええ。
山下達郎:
だけど、やっぱりそれはね、すごく良くて。
それでフランス近代に、ハマりかけてた時なんで、それでギーゼキングのドビュッシー本当によく聴いたんですよ。
そしたら、えっと、僕の、エンジニアやってた吉田保って人がいて、その人が「ラヴェル、ドビュッシーだったらフランソワだ」つってね。サンソン・フランソワ。
ヤマザキマリ:
おお、サンソン・フランソワですよね。
山下達郎:
で、それも良くて。それでまあ、少しずつ広げてったっていう感じだけどね。
ヤマザキマリ:
へえ。割と王道から逸れてる感じですよね。でもそれがフランス近代にピッタリ合うんですよね。
山下達郎:
そうそうそう。
ヤマザキマリ:
そう。だから落語で言えば噺家だったら志ん生さんみたいな感じかなみたいなね。一体山下達郎が何でできてるか。そして私は今これからまた『JOY 2』からかけようとしている。
山下達郎:
恐れ多い。
ヤマザキマリ:
いいですか? 『JOY 2』からかけて。
山下達郎:
その後に。
ヤマザキマリ:
いや、いいじゃありませんか。だってギーゼキングも要するに山下達郎を司ってる一部だと思えば。
山下達郎:
そうですね。
ヤマザキマリ:
もしかしたら今から聴く曲にギーゼキングの片鱗がないですかね?
山下達郎:
恐れ多いです。
ヤマザキマリ:
私この曲ね、超好きなんですけど、いいですか?
山下達郎:
なんですか。
『SPACE CRUSH』誕生秘話――雨雲に隠れたサンシャインとバベルの塔
ヤマザキマリ:
『SPACE CRUSH』。
はい。『SPACE CRUSH』。
これは2014年10月7日の大阪フェスティバルホールの録音になります。
♪ SPACE CRUSH (2014年10月07日 大阪フェスティバルホール)
ヤマザキマリ:
『SPACE CRUSH』をお送りいたしましたけれども、私の中ではギーゼキングにつながる何かが…。ていうか、なんで声質が全然変わんないんですか、この2014年でしょ?
時をかける歌声っていうんですかね? どういうことですか、これ。
自分でもわかんない感じですか?
山下達郎:
わかりませんね。ええ。で、なんつうのかな、PAから出てくる声とか、PAアウトっつって、後でね、テープ録るやつ、随分ふけたなとか思う時もあるんだけど、録られてるソースはあんまり変わんないんですよ。
山下達郎:
だから別にAIでこれ変えてるわけじゃなくて、イコライザーとリミッターで、だけでちゃんと揃いますからつって、エンジニアがね。うん。
で、エンジニアも思ったよりその、要するに、変わりがなかったって言ってんので。
だからまあ、それでよかったなと思ってます。
ヤマザキマリ:
やっぱりだから、もう、声が、そういう声を持って生まれてきたってことですね。このまま90になっても100になっても、時をかける声。
山下達郎:
20代の頃にはでももう追いつきませんから。
ヤマザキマリ:
いや、でもね、そんなにすっごく変わるかって言うと、そうでもないと思いますよ。はい。
だって『SPACE CRUSH』、普通にこれだって20代の曲じゃないですか。
山下達郎:
そうですね、25ん時の曲です。
ヤマザキマリ:
私これなんかね、この曲SF的、なんだろう、なんか好きなんですよ。
山下達郎:
首都高速ができたんですよ。首都高速が、えっと、池袋から先に伸びたんですよ。それでうちの実家の練馬から、あの志村の入り口で乗って、それで池袋向かって、そうすると視界がパッと開けるところでサンシャインがバーンと建ってたんです。
ヤマザキマリ:
じゃあサンシャインができた時ですね。
山下達郎:
そう、できた時。それでその日は雨が降ってて、上が雲で隠れてて、あ、これバベルの塔だなと思って、それでそれ作ったんです。
ヤマザキマリ:
その頃小学生だった私、私はいとこたちとみんなで行ったもんね。すごいですよね、やあ、あれができた時は東京って都会だなあってしみじみ思った。
山下達郎:
なんだかなあ。
ヤマザキマリ:
でももう何十年も前の話ですからね。
山下達郎:
そうですね。
ヤマザキマリ:
でもそういう古さを感じさせない『SPACE CRUSH』は本当にすごいなと思います。ギーゼキングの影響を受けた…(笑)。言わせてください何でも。
忘れられないライブは?――ダニー・ハサウェイから桑田佳祐まで
ヤマザキマリ:
ちなみに達郎さんは、聴く立場として何かこのライブ盤はベストなんだよみたいなやつってあったりするんですか?
山下達郎:
自分のじゃなくて?
ヤマザキマリ:
あ、自分のじゃなくて。他の人の。
山下達郎:
好きなライブ盤? うんうん。ダニー・ハサウェイかな。
ヤマザキマリ:
ああ、ダニー・ハサウェイは普通に自分も聴いて、生で聴いて…。
山下達郎:
散々聴きました。だから『IT’S A POPPIN’ TIME』って78年のアルバムは、ダニー・ハサウェイのライブとか、カーティス・メイフィールドのライブとか、ああいうそのスモールプレイスっていうのかな、そういうところでのあれを想定して作ったやつです。
ヤマザキマリ:
ああ、なるほど。
山下達郎:
その頃はまだホールライブが自分でできなかったんで。
ヤマザキマリ:
ダニー・ハサウェイは日本でライブを聴いたんですか?
山下達郎:
いえいえ、ライブアルバム。あ、そうか、生で行ったやつ?
ヤマザキマリ:
うんうん。
山下達郎:
生で行ったやつのね、自分のベストライブはね、71年に行ったフリーのね。フリーって、あのイギリスのグループですけど。それの共立講堂。
そこのライブ。これとホリーズ、それ高校1年の時見たホリーズと、えっと、あと何だろうな、うーん。
ヤマザキマリ:
ものすごい若い時に遡りますね。
山下達郎:
そうですね。うん。最近のやつって結局やっぱり業界目線で見ちゃうから。
ヤマザキマリ:
そうですよね。さっきもおっしゃってたみたいに、聴くことやっぱり、客観的に聴けない、その音質だったりとかその…。
山下達郎:
そうそうそう。高校生の頃はただの観客じゃないですか。だから評論家めいたこと考えないで、純粋にあの楽しむっていうか、そういう、そういう意味では、えっと、桑田くんが、病気から上がってソロライブをやった時に、横浜アリーナでやった時、そのライブは素晴らしく良かったな。
やっぱり病み上がりの、そういうこうメンタリティとかね、ミスター・ムーンライトって曲があるんだけど、それを最後にやったんだけど、それはね本当に良かったな。
ヤマザキマリ:
そういうその、闘病を乗り越えて克服した人のね…。
山下達郎:
だから最近見てると、やっぱりね、自分の、なんていうのかな、思ってるような、ライブに対するスタンスみたいなものが見えるんで、あ、人のね、やってる。
山下達郎:
だからそれが自分が共感できるもの、例えば浜田省吾さんとか、あの人はほとんど僕とキャリアが同じなので、同じような経緯をたどって、そういう人の見ると何やりたいか見えるんですよ。そういうところの共感っていうのはあるから。そういう方がまあ強いかな、ファクターとしてはね、最近はね。
ヤマザキマリ:
なるほどね。そういう、まあ共有できるかできないかっていう視点で見ていくってことですね。
山下達郎:
そうそうそう。イエモンの吉井さんのソロとかね。あの人もね、やっぱり喉がいろいろ大変で、でもちゃんと声が出るようになって。
ヤマザキマリ:
すっごいよくわかる。私も最近だから読む漫画って病気を頑張って治してる漫画とか、なんかそういう頑張って苦労して年を取ってるけど描いてるよみたいな漫画とか、そういうのがすごい好きなんですよ。
そういう方向に行っちゃうんですかねやっぱりね。
山下達郎:
先生もそろそろあれですからね。大台ですからね。
まだ生きているカブトムシ!?――ヤマザキマリの尽きない昆虫愛
ヤマザキマリ:
還暦ですよもうすぐ、そうですよ。もう自分で何の自覚もないですけどね。未だにカブトムシとかいじってる場合じゃないですよみたいな。
こないだ春に生まれたカブトムシがまだ生きてんですよね。
すごいよ、うち。
興味ないでしょうけど、うちなんか全然。うん。
山下達郎:
その、春に生まれたカブトムシはもういなくて当然なんですか?
ヤマザキマリ:
いや、50何匹生まれたんですけど、まだ2匹ね、生きてるんですよ。
私がもう本当にあのね、素敵な、もうあの住居環境を作ってあげたんですよ、大きなこの箱の中に。
そしたらそこを本当に外だと思って、生き生きとメスと出会ってまああの繁殖して。
今日見たらですね、幼虫のフンが出てたんで、生まれてますね、あれは、幼虫が。
こうして延々と私の中でこのカブトムシブリーディングが続いていくっていう。
どうでもいい話ですね。
山下達郎:
スモールワールドなんですか、それは。
ヤマザキマリ:
スモールワールドです。どうでもいい話なんですけど。
なんですかこのラジオ一体。もう、すいません私から始めた話ですけれどもね。
それぞれのこだわりという点では私は結構昆虫がこだわりかもしれませんけれどもね。
山下達郎:
昆虫もですよ。
ヤマザキマリ:
昆虫もですね。はい。でもなんか嬉しいですねこの『JOY 2』が出たっていうことは。しみじみ今この『SPACE CRUSH』を聴きながら思いましたけれども。
ソロ50周年、時をかける歌声――二人が語る創作の歳月
山下達郎:
今年でソロ50周年なんですけどね、私ね。
ヤマザキマリ:
いや、すごいな。
山下達郎:
よもや、2026年ですよあなた。
ヤマザキマリ:
そうですよ。
いいじゃないですか、別に。
山下達郎:
ライドオンタイムとかね、歌ってると夢にも思いませんでしたよ。
ヤマザキマリ:
だけどね、私は映画でも、文学でも、絵画でもそうですけど、時をかける作品ってなんか時々生まれるんですよ。ただ私たちは結局、伊藤大輔でもジョン・フォードでも時をかけてると思って見てるわけじゃないですか。
山下達郎:
まあそうですね、はい。はい。
ヤマザキマリ:
それと同じように山下達郎さんもそうやって、かけてるんでしょうね、きっとね。
山下達郎:
恐れ入ります。
ヤマザキマリ:
いやあ、あんまり普段こう面と向かってこういう賛辞とか私言うのすっごい苦手だし言ったこともないと思うんですけど。
山下達郎:
ラジオで言っちゃってますけど今日スポーツの日だからね。
ヤマザキマリ:
関係ないけどね。関係ないけどね(笑)。いや、でも本当にいい、こう、アルバムを聴きながらですね、4時間ドライブするのもいいかもしれませんよ。
山下達郎:
よろしくお願いします。はい。
ヤマザキマリ:
でもそれだけやっぱりまだまだ生産力あるということは嬉しいことだし、私もなんだかんだ言って頑張んなきゃなと思いますね。
『バキ』に『ドンケツ』――達郎とマリをつなぐ漫画の世界
山下達郎:
あの『続テルマエ・ロマエ』の3巻出たんでしょ、もう。
ヤマザキマリ:
そうなんです。達郎さん読んでくださってますよね、ずっとね。毎回更新されるたびに読んでくださってて本当にありがたいですね。
誤字脱字にも気が付かれるといち早く連絡いただくのが達郎さんであって。
山下達郎:
いやでもヤマザキ先生が、と知り合ってから、漫画に火がついて。何百読みましたかね、本当に。
ヤマザキマリ:
すごいのは『バキ』ですよね。
山下達郎:
あ、『バキ』ね、
ヤマザキマリ:
何巻まで読んだんですか?
山下達郎:
『バキ』が昨日来たのが何だっけ?
ヤマザキマリ:
昨日来た? まだ読み続けてるんですか? それでその自分が読んだ興奮を私に「『バキ』読め」ってね。あとあの「『ドンケツ』読め」みたいな。
山下達郎:
『ドンケツ』ね。『ドンケツ』読…続編がなかなか来ませんね。
ヤマザキマリ:
『ドンケツ』面白いですよね。
山下達郎:
『バキ外伝 烈海王は異世界転生しても一向にかまわんッッ』第17巻、
ヤマザキマリ:
私はいだから、達郎さんと出会って自分がそれまで読んだことがないタイプの漫画を読むようになりましたが、なかなか勉強になりますよ、いろいろと。
山下達郎:
漫画家の人って他のもの読まないんですか?
ヤマザキマリ:
いやだって、きっかけがなかったら。面白いよって言ってくれる人がいなかったら、漫画って本当にたくさん種類があるから。で、むしろ私なんかやっぱり保守だから、映画と同じように昔の漫画ばっかり読んじゃうんですよ。私の好きなつげ義春さんとか。花輪和一さんとか。それ以外のね、全然関係ないやっぱりこう、バーンと『ドンケツ』面白いから読んでみってたら、もうハマっちゃって。
音楽も漫画も異業種から学ぶ――手塚治虫の言葉と雑学の力
山下達郎:
やっぱり、異業種の人と話すると、まりさん漫画のそうだけど、異業種の人と話すると全然関係ない漫画のあれになるでしょ。だから僕なんかも異業種の人と話すと全然違う音楽入ってくるから。
ヤマザキマリ:
だから時々私が南米音楽とかブラジルの音楽なんかね、話をするとね、でも達郎さんもまあ時々ご存知だからいろんなことおっしゃるけど、
山下達郎:
おかげさまで勉強させてもらってます。
ヤマザキマリ:
そう。でもやっぱりね、いろいろ繋がってるんで、同じところなんですよ。それこそ手塚治虫さんが言ったように、いい漫画描きたいんだったら漫画から漫画学ぶなよと。いい音楽聴いていい小説読んでいい旅をして、まあいい演劇を見てそういうところからいい漫画を描くようになりなさいって言ったけど、その通りだと思います。音楽だってそうじゃないですか。
山下達郎:
そうですね。私のキーボードやってる難波弘之さんっていうね、あの人はSFの大家で、あの人と最初に仕事始めた時にやっぱりSFをたくさん教えてもらいましたからね。
ヤマザキマリ:
SFで繋がってますよね、いろいろと。
だって歌詞の中にもね、『夏への扉』とかだって。
山下達郎:
あとだから、取材か何かやってると、例えばそのね、富澤一誠さんって人がいて、あの人を取材する時は必ず要するに新刊、あの人はノンフィクションがあれなんで、例えばあの『宇宙からの帰還』、立花隆の『宇宙からの帰還』とかね、そういうの教えてもらったんですよ。だから彼に取材する時はその取材内容よりも新しい新刊の情報…。
ヤマザキマリ:
そういう方が面白いですよね。
山下達郎:
そういうところはね、本当に異業種はね、ありがたいですよね。はい。
ヤマザキマリ:
でもそれがやっぱり重要なソースだったりするわけです。
山下達郎:
雑学大事です。はい。
ヤマザキマリ:
そうですね。雑学とは言え飛びすぎですわ、この内容にしても何にしても。『SPACE CRUSH』、ギーゼキング。サンソン・フランソワかけますか?
山下達郎:
いや、いいです。
ヤマザキマリ:
いいですか? せっかくですから。でも今日は『JOY 2』をね、やっぱり皆さんに聴いていただきたいってのがあるので、もう1曲ぐらいかかります?
『BIG WAVE』のテーマに重なる、達郎の音楽を形作ったもの
ヤマザキマリ:
これ全部私が決めちゃってんです、じゃあ私の運命を決めたこの1曲ですよねやっぱりね。いいですか? じゃあこれいきましょう。『THE BIG WAVE』のテーマ。
♪ THE THEME FROM BIG WAVE (2014年10月08日 大阪フェスティバルホール)
ヤマザキマリ:
はい、お送りいたしましたのは2014年10月8日大阪フェスティバルホールで録音されました『BIG WAVEのテーマ』でございました。
ヤマザキマリ:
これさあ、ライブで聴いちゃうと、まあアルバムもいいんですけど、そういう人いますよね。もうライブの方が圧倒的だなあみたいな人ももちろんアルバムもいいんですけど何度も言いますけど。
山下達郎:
音楽表現は最初はライブだったんですよ。
ヤマザキマリ:
今その逆もあるからね。変な話で。
ギーゼキングから何度も言いますけどね。でもさっきのその木琴も何もギーゼキングもですよ、お母様が聴いてたマールタ・エゲルトもそうですけども、そういったものが全部混ざって混ざってこういう風に山下達郎の中で化学変化を起こしてこういう風になっていくと。
山下達郎:
ヤマザキ先生もだってカブトムシとあれで。
ヤマザキマリ:
ええ?
でもね、うちのカブトムシもこうやって音楽聴いて育ってるから長生きしてるかもしれませんね、うちの中で。
山下達郎:
トマトにモーツァルト聴かせるような世界ですね。
ヤマザキマリ:
そうです。うちの猫たちは少なからず聴いてますよね、音楽ね。
いやあすごい。というわけで達郎さんほぼ2時間スペシャルだったんですけど、もう終わりだって。
「うん、うん」を控えた約2時間――最後まで息の合う二人のトーク
山下達郎:
今日はなんか、だけど、落ち着いた感じで。
ヤマザキマリ:
だからこないだ言われたからですよ。それがずっと心の中の、このなんか胸の奥にあって、いい感じですか?
追いつかないように、被せないように。
山下達郎:
リスナーの皆さんが、よくこう、一言一句…。
ヤマザキマリ:
頷くのも、多すぎるって書いてあったんですよ、私が見たやつは。
「うん、うん、うん」って。なるべく今日しないようにしたんですよね。気づきました?
山下達郎:
日々これ勉強ですね。いいことじゃないですか。
ヤマザキマリ:
やろうと思えばできることもあるのかなって。
そんなわけで今回は落ち着いてお送りしてきたつもりのヤマザキマリラジオでございますが、皆さんいかがだったでしょうか。
ヤマザキマリ:
ぜひ今日の番組の感想もお送りください。メッセージの送り先です。
メッセージは番組の投稿フォームから。
SNSはXでハッシュタグマリラジ。ハッシュタグの後はカタカナでマリラジをつけてつぶやいてください。よろしくお願いいたします。

締めくくりは恒例の聴き逃し案内――「らじる★らじる」でまた会いましょう
ヤマザキマリ:
で、この次の部分ですけど、これ前にも何度も言ってもらってるんですけど、恒例のやつですね、ちょっとお願いしてよろしいでしょうか。
山下達郎:
らじる★らじるアプリのお知らせです。アプリをダウンロードしていただくと、おすすめ番組や人気番組の聴き逃しがピックアップされています。
今日の放送も1週間繰り返し何度でも聴くことができます。
ひと月に延ばせという声が多いです。
この後すぐアップする予定ですので、ぜひパソコンやスマートフォンで何度でも聴いてください。
ヤマザキマリ:
さらにマイらじる機能でお気に入り番組の登録も簡単です。
ヤマザキマリラジオのお気に入り登録をよろしくお願いいたします。
そして不定期で放送しているヤマザキマリラジオですが、次回の放送は多分年末年始になるはずでございます。
ぜひ番組ホームページでチェックしながらお待ちください。
ということで達郎さんまた来てください、すいません。
山下達郎:
よろしくお願いします。
ヤマザキマリ:
その時はその時でまたネタが貯まってると思いますので、はい。
ヤマザキマリラジオ第22弾はヤマザキマリと、
山下達郎:
山下達郎がお送りしました。
ヤマザキマリ:
では皆様、アリヴェデルチ!



コメント